Research Abstract |
【研究目的】 指紋検出法に用いられるシアノアクリレート法は,瞬間接着剤の欠点である白化現象を利用したものであるため,指紋検出法としては,様々な不具合が存在する.この不具合を補うため,ポリマーとアミン系化合物のDMAB(ジメチルアミノベンズアルデヒド)等を用いた研究を行ってきた. 今回新たに,試薬の吸収極大にあわせた高輝度青緑色LEDを作成すると共に,次の4点について検討した.(1)扱いやすくするために解重合温度を低下させる検討,(2)アミン系類似化合物の適用,(3)青緑色LEDによる蛍光指紋の効率よい光励起源の設計,(4)紙媒体の潜在指紋検出法の開発 【研究計画及び結果】 (1)ポリシアノアクリレートを作成する際の重合開始剤(水,メタノール等)の違いにより,熱重量測定等から解重合開始温度が異なることを確認した.このことから,より低い温度で解重合するポリマーを作成することで熱源温度を低く設定できることが確認できた.(2)アミン系類似化合物(ジェチルアミノベンズアルデヒド,ジフェニルアミノベンズアルデヒド)について,ポリシアノアクリレートとの混合系により指紋検出可能か検討した結果,DMABほどの結果を得ることはできなかった.これは,アミンの官能基の分子量が大きくなったため,揮発性が損なわれたものと推測する.(3)ポリシアノアクリレート/DMAB試薬で処理した検体について10分前後UV照射を行うことにより長波長側に吸収波長がシフトすることが確認でき,ガラス干渉フィルターを付した青緑色LEDでの蛍光指紋観察が可能となった。このことから,UV照射によるバックグラウンド蛍光が蛍光観察を阻害する場合,バックグラウンド蛍光を発現しない青緑色LEDを選択することで効率よい蛍光指紋としての顕在化が可能となった.同様に,ポリシアノアクリレート/DMAC試薬で処理した検体については,連続観察の結果,蛍光発現までに24時間程度時間を要する場合があるが,青色LED,緑色LEDよりも設計した今回の青緑色LEDで,鮮明な蛍光観察が可能であった.(4)紙媒体の潜在指紋は,通常,指紋中のアミノ酸に反応するニンヒドリン法で顕在化できるが,検体を溶媒に接触させるという湿式的な手法であるため,検出する際注意を払わねばならない.そこで,揮発性の高いアミン系試薬DMACをコピー用紙等に浸透させ,潜在指紋の検体を挟み込み,一昼夜若しくは,スチーム式アイロン等のスチーム蒸気の熱を与えアミン系試薬を揮発させることで溶媒を一切使用しない,新たな指紋検出法として活用できることが判明した. 今回の実験で得られた蛍光指紋は,青緑色LEDを装着させた蛍光指紋検出システムによりリアルタイムに観察,保存が行え,可視蛍光のRGB成分を分離抽出させることで顕在化が可能となった.
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