2009 Fiscal Year Annual Research Report
天然遡上量の変動を考慮したアユの資源管理・種苗放流に関する数理的研究
Project/Area Number |
21925025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森山 彰久 The University of Tokyo, 海洋研究所, 技術専門職員
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Keywords | アユ / 種苗放流 / 遡上量予測 |
Research Abstract |
アユは日本の河川漁業における重要資源であり,各地で毎年大量の種苗放流がおこなわれてきた。しかし放流種苗の生産には大きなコストがかかる。一方,アユの海からの天然遡上量は年により大きく変動するため,その年の遡上量が早期の段階で予測可能ならば,それに応じて種苗の放流量や漁獲圧などを調節することで,有効な管理を実施することができると予想される。天然遡上量の変動に確率分布を与えた数理モデルにより,遡上量予測による放流量調整の効果がどれだけ期待できるか検討した。 アユは生息密度および餌である藻類の生産力によって,その成長率が大きく異なる。またアユは河川においてなわばりを作るが,一定面積中になわばりを作ることのできる個体数は限られている。これらの要素を考慮し,資源の状態を個体数密度と重量密度の二つで記述し,成長のよい'なわばりアユ'と他のアユを区別した〓態モデルを作成した。アユの成長率と最大生息密度に影響する藻類生産性については,現実的な範囲内でいろいろな条件を設定した。また山形県鼠ヶ関川などのデータを用いた数値シミュレーションもおこなった。 (1)毎年の加入量の多寡に応じて放流量を調整,(2)毎年一定量を放流の2条件で,平均利益(漁獲金額-放流コスト〉の大きさを比較した。平均遡上量の大小にかかわらず,(1)の利益が(2)の利益を上まわった。ただし平均加入量に対して最も利益が大きい量を放流した場合には,(2)の利益は(1)の90~98%に達し,それほど大きな差がなかった。アユの遡上量予測は難しく,現状では手法が確立されていないが,平均遡上量の情報がありそれに対応する最適放流量を計算できれば,有効な放流量調整が可能であることが示唆された。また,遡上量が多い年にはダムの上など天然遡上がない場所に分散して放流することが効果的であることも,数値シミュレーションにより明らかになった。
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