2009 Fiscal Year Annual Research Report
がん患者における炎症性蛋白誘導時のフェンタニル遊離動態と薬効・副作用との関係解明
Project/Area Number |
21926006
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
高科 嘉章 Hamamatsu University School of Medicine, 医学部附属病院, 薬剤師
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Keywords | フェンタニル / 炎症性蛋白 / 遊離形分率 |
Research Abstract |
がん患者において、フェンタニルの体内動態や薬効・副作用の発現頻度には個人差が存在する。フェンタニルのような血漿蛋白結合率の高い薬物では、その遊離形分率の変動は薬物動態や薬効の個人差の要因になることが推測される。また、がん患者では、がんの組織浸潤によりα1-酸性糖蛋白などの炎症性蛋白が誘導されている。本研究では、がんによる炎症性蛋白の誘導作用とそれに伴う塩基性薬物であるフェンタニルの遊離形分率に及ぼす影響について明らかにした。対象はがん性疼痛に対し、フェンタニル貼付剤を使用している28名のがん患者とした。がん患者において、α1-酸性糖蛋白濃度は健常人と比較し有意に高く、大きな個体差も認められた。さらにがん患者におけるα1-酸性糖蛋白濃度にも大きな個人差が認められた。しかし、フェンタニルの遊離形分率とα1-酸性糖蛋白濃度との間には、有意な関係は認められなかった。さらに、フェンタニルの遊離形分率と血清アルブミン濃度や血清総蛋白濃度との間にも、有意な関係は認められなかった。一方、フェンタニルの遊離形分率とC反応蛋白濃度との間には、有意な関係ではないものの、弱い負の相関が認められた。また、フェンタニル貼付剤による副作用の発生とその遊離形分率との間にも有意な関係は認められなかった。以上より、フェンタニルの遊離形分率は、炎症性蛋白であるα1-酸性糖蛋白の影響を受けにくいことが示された。しかし、がん患者において、炎症反応とともにフェンタニルの遊離形分率に個人差が認められていることから、他の炎症性蛋白の寄与についても明らかにする必要が示された。
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