2009 Fiscal Year Annual Research Report
腎障害発現に及ぼす後発シスプラチン注の影響に関する検討
Project/Area Number |
21928003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今井 千晶 Chiba University, 医学部附属病院・薬剤部, 薬剤師
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Keywords | 腎障害 / 後発シスプラチン注 |
Research Abstract |
○研究目的 医薬品購入コストの削減に後発医薬品(以下,後発品と略す)の導入は有効であり,診断群分類別包括評価導入に伴い後発品への切り替えが様々な施設で行われている。一方で,注射剤の後発品と先発医薬品(以下,先発品と略す)との品質に関して比較した報告が散見され,いずれの報告においても主成分の含量に差は見られないが,先発品に存在しない未知の物質や主成分の分解物などが検出されている。後発品の注射剤の承認審査では,先発品との同等性を物理的な性質である浸透圧,pH,変化点pHなど簡単な指標により比較され,先発品と同じ有効成分を用いていること,製剤添加物の安全性が確立されているものを用いていることを理由に安全性試験が簡略化されている。そのため,後発品では先発品と異なる可溶化剤,安定化剤,溶解補助剤等の添加剤が用いられており,先発品に見られない副作用が発現する可能性に留意する必要がある。 当院では注射用シスプラチン製剤の後発品が採用され一年を経過し,各診療科で広く用いられた。一方,比較的シスプラチンを高用量で投与する診療科で,以前よりも腎機能障害の発現頻度が高いのではと議論され,その時期が後発品の採用時期と重なることから因果関係が疑われた。そのため,過去使われていた注射用シスプラチン製剤の先発品を治療に用いた患者と,後発品を治療に用いた患者の腎機能障害の発現頻度をレトロスペクティブに調査を行い,後発品のほうが腎機能障害の発現頻度が高い可能性が示唆されたため,後発品から先発品に採用を切り替えとした。その後,レトロスペクティブな調査の期間を延ばし対象患者数を増やし検討し直した結果,患者背景に偏りが生じ腎機能障害の発生頻度の上昇は後発品製剤使用のみならず,他の要因も関与する可能性が示唆された。また,現在市場に流通している注射用シスプラチン製剤を吸光光度法による品質比較では、大きな違いは認められなかった。 今後,注射用シスプラチン製剤の後発品の使用と腎機能障害の発現頻度の上昇の因果関係をさらに追及するために,後発品から先発品に再度切り替えた後に腎機能障害の発現頻度が低下するか否か調査期間を延長し確認する。また現在市場に流通している注射用シスプラチン製剤の後発品と先発品の,さらなる品質の比較を行ない,先発品に存在しない未知物質や主成分の分解物が検出されるかどうかを確認する。
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