Research Abstract |
研究目的 造血細胞移植期に頻発する口腔粘膜障害は,耐え難い疼痛を引き起こすとともに感染のリスクを高める。私は,移植期の口腔内管理を現場の医療スタッフと行うとともに,臨床研究を行なってきた。がん対策基本法の施行により,「がん看護実践に強い看護師」の育成研修が実施され,苦痛に対する適切なアセスメントと,症状コントロールが目的の一つとなっている。患者や現場でケアを支援している看護師が,より安全で効果的なケア方法を理解し実践できるように,具体的なアセスメントの方法や口腔内管理方法の動画映像を編集し,実践に即した口腔内の管理の教材を作成する。動画等を用いた教材を利用し,充実した口腔ケアを展開する。移植患者の粘膜障害の重症度やモルヒネ使用量に及ぼす影響について調査する。 研究方法 本院で過去6年間に造血移植前処置を受けた250名を対象とした。移植の種類は,血縁者間骨髄移植:20名,末梢血幹細胞移植:96名,非血縁者間骨髄移植:73名,臍帯血移植:61名であった。移植前処置開始から生着まで連日,当血液内科作成の口腔内観察表でのモニターを継続し,CTCAE v3.0を基準に粘膜障害の程度を評価した。各患者の移植期の最大スケールを求め,gradeの経緯とモルヒネ使用の変化を調べた。また,スタッフの口腔内をモデルとし,具体的なアセスメントや口腔内管理方法の動画映像を編集した。 結果及び考察 粘膜障害は,過去6年間で,重症の割合が減少する一方で,軽症の割合が増す傾向にあった。モルヒネ使用は重症化した時点での使用量が増す傾向にあったが,口腔内痛に限局できるものは少なかった。具体的なアセスメント方法や口腔内管理方法を動画映像に収めることにより,スタッフ勉強会での評価は高く,関連病院との合同研修会にも利用された。今後は,関連病院とも連携し,移植期の患者に対し,実践に即したより効果的で安全な移植期の口腔感染管理対策への構築につながるかもしれない。
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