2022 Fiscal Year Annual Research Report
Scientific Foresters and Colonial Forestry in the Japanese Empire
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21H00502
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米家 泰作 京都大学, 文学研究科, 教授 (10315864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 大将 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (00582834)
竹本 太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10537434)
三島 美佐子 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (30346770)
水野 祥子 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40372601)
永井 リサ 帝京大学, 経済学部, 講師 (60615219)
中島 弘二 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90217703)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 林業 / 森林保護 / 環境保全 / 林学 / フォレスター / 植民地 / 帝国主義 / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2022年度)に繰り越しとなった前年度(2021年度)の研究計画と並行して、次の8班に分かれ、それぞれ鍵となる資料の蒐集と分析を進めた。すなわち、(1)フォレスターデータベース班、(2)帝国林業班、(3)台湾班、(4)樺太班、(5)朝鮮班、(6)満洲班、(7)南方班、(8)イギリス帝国班、である。 このうち満洲班に関しては、2022年度後半に中国政府の方針により日本人研究者の入国に制約が生じ、次年度(2023年度)への延長を余儀なくされ、二次的なプランとして、台湾での資料調査に切り替えることになった。 以上の作業を通じて、林学にもとづく「科学的林業」を主導したフォレスターたち(林学者や林政官僚、林務官、林業家)が、帝国日本の植民地において、人材と学知のネットワークを築き、その「遺産」ともいうべき影響が戦後にも残された状況について、多様な事例を見いだすことができた。ただしそれは、旧日本帝国の植民地において一様ではなく、かなりの差違を伴うことも重要な知見として得られた。そのことは、戦後日本に帰還したフォレスターたちの、植民地時代に対する理解や、旧植民地の戦後に対する理解にも反映していたことが指摘できる。その意味でも、日本の「帝国林業」は決して一枚岩的なものではなく、各地域の地理的・政治的な差異を抱え込みながら展開したものであり、むしろそうした多様性や差異を統合するために、「帝国林業」が唱導された面にも留意が必要である。 上記の成果の主要な部分については、本研究のメンバー全てが執筆に参加した中島弘二編『帝国日本と森林』(勁草書房)を刊行し、公表した。本書は、問題提起を行う序章と日本の帝国林業の特質を議論する3章からなる第1部と、各植民地の状況を議論する5章からなる第2部、ならびに全体を総括する終章、そして様々なコラムから構成される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
満洲班に関しては、中国政府の方針により、2022年度後半に日本人の入国が容易でなくなり(円滑な査証の発行が期待できなくなった)、年度内の調査予定を再検討せざるをえなくなったため、次年度(2023年度)への延長を余儀なくされ、二次的なプランとして、台湾での資料調査に切り替えることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(2022年度)の研究の一部を次年度(2023年度)に繰り越ししたため、本報告を記している時点で、本研究の最終年次(2023年度)が終了しており、本研究としては今後の研究の推進方策を記すべき状況ではなくなった。ただ、幸いなことに、2024年度から3年間にわたり、基盤研究(B)として「20世紀東アジアの帝国林業と環境思想-近代日本の科学的林業とその「遺産」-」が採択された。これは本研究を継承・発展させるものであり、研究メンバーも同じである。この新たな研究を通じて、本研究の課題を踏まえ、その解決に取り組みたい。
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Remarks |
本研究の成果出版物である『帝国日本と森林』刊行に合わせて、本書の理解を助ける資料や文献を観覧てきるようにした巡回展示を実施した。その初回は、本研究の研究分担者・三島美佐子が所属する九州大学で開催した(2023年3月1日~4月28日)。なお本巡回展示は、研究分担者の所属大学を巡回する形で、2023年度にも引き続いて実施する。
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