2021 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking Impact Assessment from Perspectives on Responsible Research and Innovation (RRI)
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21H00503
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
標葉 隆馬 大阪大学, 社会技術共創研究センター, 准教授 (50611274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 亘 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20310609)
岡村 麻子 文部科学省科学技術・学術政策研究所, 科学技術予測・政策基盤調査研究センター, 主任研究官 (20439219)
加納 圭 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30555636)
福本 江利子 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 特任助教 (40835948)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インパクト評価 / 責任ある研究・イノベーション / 科学技術政策 / 研究評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、海外におけるインパクト評価をめぐる議論のレビュー分析を中心に行うとともに、その政治性の理論的分析を行った。また各国の研究評価をめぐる課題の議論の精査を行い、人文・社会科学分野の評価の問題に関する論考を執筆した。加えて特に日本において情報が少ない、イタリアの人文・社会科学分野をめぐる研究評価の課題についての文献調査を精力的に進めた。その結果、研究資料として『イタリアにおける研究評価をめぐる議論の概要』大阪大学社会技術共創研究センターELSI note No.16の公表などの成果を得た。 日本においても、2021年3月に閣議決定された科学技術・イノベーション基本計画の中で、人文・社会科学をめぐる評価に関わる論点が定期されている(内閣府 2021)。また2021年11月には日本学術会議が『提言 学術の振興に寄与する研究評価を目指して―望ましい研究評価に向けた課題と展望―』を公表されているが、その中でも海外の議論状況は重要な情報源として整理が行われている(日本学術会議 2021)。このような状況を踏まえながら、2018年出版のアンドレア・ボナッコルスィ編『人文・社会科学における研究評価: イタリアの経験からの教訓』に注目し、その内容を包括的に紹介・考察を行った。 イタリアは社会科学の強い伝統を有しており、研究評価に関しても積極的に議論を提起し、動を起こしている。 そこでの議論では、A)評価の対象となる研究成果、研究者、コミュニティなどをラベリングし、分類すること。B)上記のようにラベリングを施された対象を評価する際に助けとなるような、データセットやピア・コミュニティを見出し、確立すること。C)研究の「質」(quality)を定義・議論し、それによって、インパクトの広い概念を認めることなどの論点が提示されていること。以上の論点をめぐる議論を概観した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、研究プロジェクトメンバーならびに協力参加者を中心とした研究会を定期的に開催し、海外におけるインパクト評価をめぐる議論のレビュー分析を中心に行うとともに、その政治性の理論的分析を行った。また各国の研究評価をめぐる課題の議論の精査の一環として、特に日本において情報が少ない、イタリアの人文・社会科学分野をめぐる研究評価の課題についての文献調査を精力的に進めた。その結果、研究資料として『イタリアにおける研究評価をめぐる議論の概要』大阪大学社会技術共創研究センターELSI note No.16の公表などの成果を得ている。また国内における人文・社会科学分野の評価の問題に関する論考の執筆も行った。このような分析・調査の進展から、本研究は計画を考慮して順調に進んでいるものといえる。 なお、英国REFにおけるインパクトケーススタディの分析については、先行研究の精査は順調に進んでいる一方、インパクトケースの最新版(REF2021)の公表時期の問題から、最新のデータ収集は2022年度の作業課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、先行研究の包括的な分析をさらに継続的に行うとともに、2022年5月に公開されてる予定のREF2021のインパクト・ケーススタディに関わるデータ収集ならびにシステマチック・レビュー、また関係者へのヒアリング調査などを行う。 加えて、昨今の研究評価をめぐる研究では、現在の研究評価枠組みにおいてアウトプットやアウトカム評価の視点が強く、研究活動が持つ多様な知識生産や社会的貢献を評価から取りこぼしてしまう限界がよく認識されている。この状況を踏まえながら、本研究では「生産的相互作用」の視点を補助線として、幅広いインパクトを評価するための新しい評価枠組みについての検討と提案をおこなう前年度に引き続き行っていく。 「生産的相互作用」は、単純な論文数やケーススタディの記述の評価とは異なり、アクター間のネットワークの拡大・変化をインパクトに至る中間物として捉えて評価しようとする試みである。「生産的相互作用」の観点から考えた場合、例えば被災した歴史・民俗資料の回収・修復・保存、被災無形文化財に関わる調査記録の共有や復旧活動といった学術活動は(e.g. 高倉・滝澤 2013)、地域の住民や行政と関わり合いながら資料や文化財を通じて人のつながりを支援するものであり、積極的な評価の机上に上ことになる。また、データベース構築・運営・保守管理の営み、図書館・博物館や科学館における資料の集積・展示・ストーリー解釈の普及なども、人・モノ・情報をつなぐ媒介となり、(潜在的な新規研究の可能性を増大させる)新しいネットワークの形成・拡大を促す効果を持つものとしてより積極的な評価がされることになる 。 2022年度も引き続き、この「生産的相互作用」の視点を援用しながら、大学等の研究機関が行う研究活動の多様性について知見を持つURAなどの専門家へのヒアリングなどを併せて行っていく。
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Research Products
(3 results)