2022 Fiscal Year Annual Research Report
将来世代への『資源』継承のための財産法理論の再構築ー自然資源等に着目して
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21H00668
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横山 美夏 京都大学, 法学研究科, 教授 (80200921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石綿 はる美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10547821)
荻野 奈緒 同志社大学, 法学部, 教授 (30546669)
齋藤 由起 北海道大学, 法学研究科, 教授 (40400072)
山根 崇邦 同志社大学, 法学部, 教授 (70580744)
原田 大樹 京都大学, 法学研究科, 教授 (90404029)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 資源 / 保全 / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①具体的問題状況の調査・分析、②私的所有の規律及びそれを支える法理論の調査・研究、③財の維持・管理の費用負担のあり方に関する検討を下記の通り行った。 ①につき、第一に、文化財に関し、歴史的建造物の保全に関する北海道小樽市の取組みを現地で調査した。その結果、景観条例、文化財保護条例、「小樽市歴史文化基本構想」など各制度が実際にどのように機能しているか、小樽市における文化財保護の現状と課題が明らかになった。また、庭園・建物の再設計・改築に伴う視覚芸術的価値の保全に関する日米の裁判例及び文献の調査・検討を行った。それにより、日本では、著作者人格権に基づく価値保全の利益よりも、庭園・建物所有者の利用権の行使が尊重される傾向があることが明らかになった。第二に、自然資源に関し、森林の保全のあり方について、文献調査のほか、三谷羊平氏(京都大学准教授)による「私有地保全施策の経済分析―森林所有者の参加契約的行動を中心に―」と題する講演を実施して検討を行った。その結果、制度の設計に際して、経済学視点から当事者の動機づけを高める方法について示唆を得た。このほか、景観を保全する方法として行政上の契約の利用可能性について考察を進め、用益物権類似の機能を持つ諸契約・協定の現状及び課題を明らかにした。 ②につき、フランス法の環境物的債務(環境法典L.132-3条)に着目し、文献調査の他、現地調査を行った。その結果、この制度が、私的所有に服する財の価値を将来世代に配分する法的しくみの1つとして、日本でも参照に値することがわかった。 ③につき、令和3年民法改正時に新設された財産管理制度を、管理義務の所在を中心に検討した。また、所有者負担の原則に基礎をおく民法の費用負担規定の分析を行い、文化財保護法における保全費用の負担ルールに関する現状と課題を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然資源および文化財のそれぞれについて、課題の抽出および、対応方法について、外国法を参照しつつ検討が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文化財、自然資源それぞれについて、将来世代のために保全すべき資源を構成する財の持続的な利用と管理を可能にする法的スキームのありかたについて検討を進め、研究成果としてまとめる予定である。
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Research Products
(3 results)