2021 Fiscal Year Annual Research Report
地球最古の鉱物に保存された微小包有物から地球の“水”の起源を読み解く
Project/Area Number |
21H01177
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
山本 伸次 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (30467013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 岳史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10251612)
伊藤 正一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 初期地球 / 水の起源 / 砕屑性ジルコン / 水素同位体比 / アパタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な太陽系天体における水素同位体比が分析可能となり、地球の“水”の起源について、水素同位体比を中心とした様々な議論が展開されている。本研究課題では、西オーストラリア・ジャックヒルズ礫岩に含まれる約44億年に遡る世界最古の鉱物(ジルコン)中に残存するアパタイト鉱物の水素同位体比を系統的に分析し、マントルおよび海の水素同位体比を復元することで、地球の水の起源およびその後の進化を解読することを目的とする。
研究計画初年度の目標として、30億年~44億年前の砕屑性ジルコンを迅速・大量に回収し、そこに含まれるアパタイト包有物を100粒子オーダーで分析可能とすることを目指した。既往研究(Hopkins et al., 2009; 2010、Rasmssen et al., 2011)で報告がある通り、ジャックヒルズ礫岩から回収される砕屑性ジルコン中の包有物は様々な程度に二次的鉱物への置換が進んでおり、わずかに残存するアパタイト包有物を探査するためには100万粒子オーダーでの砕屑性ジルコンの回収が必要不可欠である。そこで研究計画の第一弾として、砕屑性ジルコンの迅速・大量回収技術の向上に取り組んだ。従来は人力による手作業での水式選別(パンニング処理)が主な手段であったが、水式選鉱機(ウィルフレテーブル)の導入により、砕屑性ジルコンの分離・回収能力は格段の向上に至り、数十万~数百万粒子のジルコンを迅速に回収可能な状態となった。また、残存包有物の鉱物同定に関して、迅速に包有物同定が可能な適切な分析手法の検討をおこなった結果、その中に残存するアパタイト包有物を200粒子以上回収するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
砕屑性ジルコン中にごく僅かに残存する数ミクロンサイズのアパタイト包有物の探査について、SEM-EDS、EPMA、Laser-Ramaを用いた鉱物同定をおこなった結果、これまでに219粒のアパタイトを回収するに至った。これは従来、ジャックヒルズ礫岩の砕屑性ジルコンにはほとんどアパタイト包有物は残存していないという見解(Rasmussen et al., 2011)を覆すものであり、今後のアパタイト包有物の水素同位体比分析への道程を拓いたといえ、今後のアパタイト水素同位体比分析に向かうものである。
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Strategy for Future Research Activity |
砕屑性ジルコン粒子に残存するアパタイト包有物を100粒子オーダーで分離回収/探査する技術プロトコルは概ね完成に至ったため、研究計画の第3段として、アパタイト包有物の水素同位体比分析に取り組む予定である。アパタイトの水素同位体比分析には研究分担者である京都大学・伊藤正一准教授保有の二次イオン質量分析装置を用いる。天然鉱物の水素同位体分析には、クラック(割れ目・ヒビ)や鉱物粒間に存在する吸着水が水素同位体比に大きく影響することが知られており、目的とするアパタイト包有物(数ミクロンサイズ)を適切な位置・深さにおいて研磨するとともに鉱物最表面の研磨状態が重要となる。この点において、適切な研磨位置を設定するための機器としてプレパラップMG-300の改造および各種研磨装置の導入をおこなった。またアパタイト包有物の回収・分析と並行して、アパタイト包有物を含む砕屑性ジルコンの年代および起源を明らかとするため、U-Pb分析・Sc/Y分析をLA-ICPMSを用いて行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] マントル掘削でのみ解明される地球科学問題2021
Author(s)
森下 知晃, 藤江 剛, 平内 健一, 片山 郁夫, 纐纈 佑衣, 黒田 潤一郎, 岡本 敦, 小野 重明, 道林 克禎, 諸野 祐樹, 山本 伸次
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Journal Title
地学雑誌
Volume: 130
Pages: 483-506
DOI
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