2022 Fiscal Year Annual Research Report
Heat Transfer Measurement on Nanogap -Investigation of Transition from Radiation to Heat Conduction
Project/Area Number |
21H01261
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 智由 京都大学, 工学研究科, 教授 (60378792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 修吾 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60743953)
廣谷 潤 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80775924)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノギャップ / 熱放射 / シリコン / MEMS / へき開 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではMEMSデバイスを用い、ナノスケールの空間において伝熱が放射から熱伝導に遷移する領域を実験的に測定します。単結晶シリコンの(111)面を真空中でへき開破壊することで、数μm角の平行平滑なナノギャップを創製し、これを数nm以下の分解能で間隔を制御しようというものです。その伝熱測定には精密な局所温度測定が必要であり、顕微ラマン分光、サーモリフレクタンスを用いて、0.1K以下の分解能を実現します。これらにより固体接触面における伝熱現象という基本的でありながらいまだに明らかでない現象を解明し、様々な機械・構造における熱エネルギーの効率的な利用に応用します。 MEMSナノギャップ創製デバイスはSOIウエハのデバイス層(厚さ5μm)に形成し、デバイス層の面方位は(110)で、へき開面は(111)面です。デバイスを固定する治具に組み込んだ圧電アクチュエータを駆動し、シャトル部に引張荷重を印加、へき開で分割してギャップを創製しました。この際、シャトル部を櫛歯型静電アクチュエータ駆動してへき開後のギャップの間隔を変化し、変位を平行平板型静電容量センサで計測し、ナノメートルの変位分解能を実現しました。伝熱測定については、可動部を通電により最高100K程度まで加熱し、ギャップの両端の温度を測定しています。これらを真空チャンバー中で行い、真空下かつ顕微鏡観察下での計測を進めています。 研究分担者が担当するサーモリフレクタンスでは昨年度に引き続きマイクロスケール空間分解能を持つ非接触温度計測技術について検討しました。バランス型光検出器とロックインアンプを用いたレーザー光学系の基本設計が完成し,目標とする温度計測精度(0.1K)を確認しました。さらに数種の金属薄膜で実験を行った結果、理論値と同様の傾向を示す反射光強度の温度変化依存性が認められ、開発した計測技術の妥当性を確認しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目標であるMEMSナノギャップデバイスの製作とこれを用いたナノギャップのへき開破壊による創成と静電アクチュエータおよび静電容量型変位センサによるギャップ間隔の制御技術の確立、およびナノギャップ両端の温度計測方法の確立を行った。前者についてはnmのギャップの制御と最小10nm以下のギャップの作製を確認した。後者については研究代表者のグループは顕微ラマン分光法による1K程度の温度分解能を確認し研究分担者のグループはサーモリフレクタンスによる温度測定手法を確立し、当初の計画通りに進めている。これらに加えて以下の特筆的な成果を得ており、当初の計画以上に進展していると判断した 研究代表者のグループではナノギャップの間隔測定制御の実験において電極間が静電引力やカシミール力で電極の引き込みが起こる現象を確認し、これを応用してギャップ間隔を推定した。また、実験的に半導体電極間のカシミール力を測定した結果について学術論文誌にこれを発表している。また、半導体ナノギャップ間の熱電子放出による理論計算を行い、半導体のバンド構造を考慮した電界電子放出の理論と数値シミュレーションを行い、これも論文誌に発表している。 研究分担者が担当するレーザー光学系の開発において最も重要な点は、光計測の高感度化と高安定性である。独自の光学系に偏波面保持光ファイバーとバランス型検出器を採用したことで、室内温度変化や振動などの環境因子の影響を最低限に抑え,空間分解能約10μmで計測標準偏差5×10^-6でアルミ薄膜のサーモリフレクタンス係数5.46×10^-5/Kを確認した。さらに配線パターンを施した試料をジュール加熱した実験を行い,投入電力と明瞭に相関する表面温度変化を捉えることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は当初の目標であるギャップ間隔を制御しながらのナノギャップ間の伝熱現象の測定を目指す。研究代表者グループが開発したMEMSナノギャップデバイスを顕微ラマン分光装置(代表者)、サーモリフレクタンス装置(研究分担者)の観察下で動作させ、一端を加熱したときの両端の温度を測定することでナノギャップにおける熱輸送のギャップ間隔依存性を調べ、伝熱現象が熱放射からフォノンによる熱伝導に遷移していく領域の伝熱現象、伝熱特性を明らかにする。 研究代表者のグループは引き続きナノギャップデバイスの改良と、製作に取り組みながら、ナノギャップデバイスを小型真空チャンバーの中でへき開によりナノギャップをデバイス上で創製、一方に取り付けられたヒータでギャップの一端を加熱し、加熱端と他端の温度を顕微ラマン分光計測によって行う。 研究分担者は空間分解能と温度分解能を追求するために、対物レンズの最適化と光源自体の安定性の向上および制御ソフトの充実を図り、実験系を完成させる。さらにナノギャップ試料を用いた実験を行い、ギャップ間熱輸送に伴う温度変化と開発装置の計測感度の関係を把握し、さらなる計測精度向上を目指す。
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Research Products
(7 results)