2022 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of composition-modulated Zn-based composite films electrodeposited on steel sheets for next generation high corrosion resistance
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21H01672
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 博昭 九州大学, 工学研究院, 教授 (70325504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大上 悟 九州大学, 工学研究院, 助教 (90264085)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合電析 / 亜鉛 / ジルコニウム / パルス電解 / 耐食性 / 水素発生 / 加水分解 / 非懸濁溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
ZrO2+イオンを含む非懸濁溶液からパルス電解,ダブルパルス電解によりZn系複合電析膜を作製し,その微細構造および耐食性について調べた結果,以下のことが分った。5000 A・m-2の定電流電解では,Zr化合物を含む電析物が一部粗大化しており,その析出は不均一であったが,パルス電解により得られた複合電析膜には,粗大化した電析物は見られず, Zr化合物を含む複合膜が薄膜状に析出している箇所とその複合膜が剥離したような箇所が見られた。高電流密度と低電流密度のダブルパルス電解で得られた電析膜においても粗大化した電析物は見られず,Zr化合物を含む細かな粉状結晶が析出していた。パルス電解では,電流オフの際,H2発生反応が一旦遮断され,また,電析Znの微量溶解により表面状態が変化することにより,また,ダブルパルス電解では,低電流密度の際,H2発生反応が一旦減少し,また,ほとんどZnのみの析出となり表面状態が変化することにより,H2の発生箇所,すなわちZrO2+の加水分解反応の箇所が固定化されずランダムになった可能性がある。Zr化合物を含む電析膜の方がH2発生反応速度が速いことが判明した。従って,Zn膜上に析出したZr化合物がH2発生の触媒として作用し,その後のH2発生とZr化合物の析出位置を固定化していると考えられる。Zr化合物は,いずれの電解法においても,電析膜の表層に濃化したが,ダブルパルス電解では,電析膜の内部にも共析した。3 mass% NaCl水溶液中における腐食電流密度はダブルパルス電解により作製した皮膜が最も小さく,その次にパルス電解により作製した皮膜が小さかった。ダブルパルス電解では,Zr化合物による表面被覆率が高くなることが予想され,溶存酸素の還元反応が低下したと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分散粒子を含まない非懸濁浴からの複合電析にパルス電解,ダブルパルス電解を適用した研究はこれまで行われていない。ダブルパルス電解で得られた電析膜では,表層部以外に電析膜の中央部においてもZr化合物の共析が多く見られ,耐食性の向上が期待される。ダブルパルス電解では,電析前半は比較的緻密な結晶となるのに対して後半は粗な柱状結晶となっており,その境界部にもZr化合物が濃化していた。このような特徴的な組織が得られる理由は,現時点では不明であるが,結晶形態が変化する境界部では,空隙が生じることが予想される。ダブルパルス電解において電析膜の中央部においてZr化合物が濃化したのは,その箇所に空隙が存在するためと考えられる。また,Znの結晶形態が前半と後半で大きく変化する理由についても明らかでないが,Zr化合物の存在形態が影響を及ぼしている可能性もあり,今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 陰極,酸化物へのPEGの吸着量測定および吸着挙動のその場解析 ・キャピラリー電気泳動装置(設備申請予定)を用いて,陰極面および各種酸化物微粒子へのPEGの吸着量を測定する。 交流インピーダンス法により,Zn電析の反応抵抗を測定し,PEGの吸着量とZn電析の反応抵抗の関係を調べる。これらの結果より,PEGの吸着能とその構造の関係を明らかにする。 ZnSO4浴,各種複合電解浴に,種々の構造を持つPEGを添加して,大学に既存の電気化学 AFM ,レーザー共焦点微分干渉光学顕微鏡により,PEGの陰極面への吸着,脱着挙動をin-situ解析する。この結果より,Znおよび活性金属酸化物の析出に対するPEGの構造の影響を考察する。本実験により,Zn-活性金属酸化物微粒子複合電析におけるPEGの最適構造を明確にする。
(2) 電析膜の各種性能に及ぼす酸化物ナノ微粒子, PEG共析の影響調査 ・電析膜の犠牲防食能を評価するため,電解により膜を形成した後,カッターナイフにて素地Feに達する傷を入れ,塩水噴霧試験を行なう。傷部からの腐食の進行状況の程度により膜の犠牲防食能を評価する。電析膜の平均的な耐食性は,分極曲線,電気化学的インピーダンススペクトル測定により評価する。電気化学測定システム(レンタル予定)を用いてインピーダンススペクトルを解析する。耐摩耗性は摩耗試験機にて,加工性は180°密着曲げにて,また塗装性は塗装後の耐食性, 塗膜の密着性にてそれぞれ評価し,諸特性の観点から,Zn-活性金属酸化物の多層膜および傾斜組成膜の最適な構造を決定する。
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Research Products
(1 results)