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2021 Fiscal Year Annual Research Report

悪臭が香りの引き立て役となる仕組みの解明

Research Project

Project/Area Number 21H02140
Research InstitutionKyushu University

Principal Investigator

稲垣 成矩  九州大学, 医学研究院, 助教 (30827952)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords嗅覚 / 嗅神経細胞 / 相乗効果 / アロステリック相互作用 / 順応
Outline of Annual Research Achievements

悪臭と形容される匂いを足すと、それまでの香りよりも遥かに良い香りに変わることがある。この特定の匂いが、香りのエンハンサーとして機能している例はいくつも知られているが、その具体的なメカニズムは明らかになっていない。
鼻腔内に取り込まれた匂い分子は、嗅上皮に存在する嗅神経細胞によって認識される。個々の嗅神経細胞は、ヒトの場合約350種類、マウスの場合約1000種類存在する嗅覚受容体の中から1種類の受容体を発現している。従来、嗅神経細胞の混合臭に対する応答は、個々の匂い成分に対する応答の線形的な足し算になると考えられてきた。しかし近年、申請者らによって、実際には応答が相乗的に増強される場合があることが分かってきている。この相乗効果は、特定の匂いがエンハンサーとして機能するために、重要な役割を果たしていると考えられるが、その機構や法則性に関しては全く分かっていない。
そこで当該年度では、この相乗効果の詳細を明らかにするために実験を行った。麻酔マウスにおいて嗅神経細胞の匂い応答を計測した結果、相乗効果が嗅覚受容体における正のアロステリック効果によって生じている可能性が示唆された。さらに様々な匂い分子の組み合わせにおいて広く相乗効果を示す細胞(Broadly-tuned cells)と、特定の組み合わせにしか相乗効果を示さない細胞(Narrowly-tuned cells)が存在することが明らかになった。また従来、嗅覚順応は、匂いに応答した細胞で生じると考えられてきたが、本課題遂行中に予想外にも、匂いに応答しない細胞においても順応が生じることが明らかになった。この相乗効果とグローバルな順応は、動物の匂い認識に重要であると考えられるため、今後引き続きその機構・法則性について調べていく必要がある。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

嗅神経細胞の相乗効果について調べるため、麻酔マウスにおける嗅神経細胞の匂い応答を計測した。バレルアルデヒド(Val)に応答しない嗅神経細胞に着目し、Valの混合によって酢酸アミル(Aa)に対する応答が変化するか調べたところ、約65%の細胞においてAaに対する応答が相乗的に増強されることが分かった。この結果から、Valはアゴニストではなくエンハンサーとして機能しており、相乗効果は嗅覚受容体におけるアロステリック効果によって生じることが示唆された。次に、嗅覚受容体のエンハンサーに対する結合特異性について調べるため、炭素鎖長の異なるエンハンサーによる相乗効果の違いを調べたところ、Broadly-tuned cellsと、Narrowly-tuned cellsが存在することが明らかになった。
嗅神経細胞における相乗効果が混合臭の認識に重要である一方で、順応は匂いのゲイン調節に重要である。従来、嗅上皮には、遠心性や介在性の神経入力が存在しないことから、嗅神経細胞は細胞自律的に順応すると考えられてきた。しかしながら、本課題遂行中に偶然にも、3分以上の長い持続刺激では、匂い応答細胞と匂い非応答細胞の両方で順応が生じることが明らかになった。このことは、順応が細胞非自律的にも生じることを意味しており、眼における瞳孔調節機能のように、嗅上皮において匂い情報がグローバルに調整される可能性を示唆している。
以上より報告者は、嗅上皮おける相乗効果の機構を明らかにしつつあるだけではなく、グローバルに生じる細胞非自律的な順応を新たに発見した。今年度の結果は、単純なシステムだと考えられてきた嗅上皮において、実際には複雑な情報統合やゲイン調整が行われていることを示唆しており、現在の嗅覚受容に関する理解を大きく塗り替える可能性がある。よって当該年度における研究は、期待を上回る進展があったと評価できる。

Strategy for Future Research Activity

今年度得られた結果により、①嗅神経細胞で生じる相乗効果は、嗅覚受容体のアロステリック効果によって生じること、②Broadly-tuned cellsとNarrowly-tuned cellsが存在することが分かった。今後も引き続き実験を行うことで、匂い分子の官能基・炭素鎖長等の構造的特徴と相乗効果の関係性について、具体的に明らかにしていく。また嗅神経細胞のアゴニスト特異性と、エンハンサー特異性の関係についても解析を行い、匂いの情報コーディングにおける相乗効果の意義についても明らかにする予定である。
今年度の実験では、予想外にも、嗅上皮においてグローバルな順応が生じることが明らかとなった。この結果は、全く未知の現象であり、既存の知見では説明がつかない現象である。そこで実際に、この現象が嗅神経細胞の活性化をきっかけに生じることを示すため、DREADDシステムによって、グローバルな順応を引き起こすことが可能か検証する。具体的には、まずDREADD 受容体であるrM3D(Gs)を一部の嗅神経細胞にだけ発現する遺伝子組み換えマウスを作製する。そして、リガンド(CNO)の腹腔導入後に、嗅上皮においてグローバルな順応が生じるか検証する。また、嗅上皮のex vivoイメージング系を確立し、阻害剤によるスクリーニングを行うことで、グローバルな順応の基盤となる機構を同定する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] In vivo Optical Access to Olfactory Sensory Neurons in the Mouse Olfactory Epithelium2021

    • Author(s)
      Shigenori Inagaki, Ryo Iwata, Takeshi Imai
    • Journal Title

      bio-protocol

      Volume: 11 Pages: -

    • DOI

      10.21769/BioProtoc.4055.

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Non-synaptic mechanisms mediate global desensitization of olfactory sensory neurons in vivo2022

    • Author(s)
      Shigenori Inagaki, Takeshi Imai
    • Organizer
      Neuro2022
  • [Presentation] Chronic calcium imaging of olfactory sensory neurons in mice2021

    • Author(s)
      Shigenori Inagaki, Takeshi Imai
    • Organizer
      44th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society
  • [Presentation] Global adaptation in the mouse olfactory sensory neurons in vivo2021

    • Author(s)
      Shigenori Inagaki, Takeshi Imai
    • Organizer
      Symposium “Circuit Construction in the Mammalian Brain”

URL: 

Published: 2022-12-28  

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