2021 Fiscal Year Annual Research Report
Functional regulation of immune cells in the metabolic disease prevention mechanism by brown seaweed fucoxanthin
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21H02276
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
細川 雅史 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (10241374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡松 優子 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (90527178)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フコキサンチン / 免疫細胞 / マクロファージ / T細胞 / フコキサンチノール / オルガネラ / 炎症抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究において、以下の研究成果を得た。 (1)フコキサンチンを投与した肥満マウスの脂肪組織では、これまで報告しているように活性化マクロファージマーカーのF4/80およびM1マクロファージマーカーのCD11cのmRNA発現量の低下が確認された。さらに、M1マーカー(CD11c)/M2マーカー(Arg1)比も低下したことから、フコキサンチンがマクロファージの脂肪組織への浸潤を抑制するとともに、極性変化にも関わることが推察された。一方、T細胞マーカーを解析した結果、CD8に加えCD25およびCD4のmRNA発現量が低下し、T細胞サブセットへの影響が示唆された。(2)非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスの肝臓では、フコキサンチンの投与によりCD8およびCD25のmRNA発現量が低下傾向を示した。(3)肝細胞およびマクロファージ株をフコキサンチン代謝物のフコキサンチノールで処理し、各オルガネラにおける蓄積をHPLCにて定量した。細胞膜、ミトコンドリア、ミクロソーム画分でフコキサンチノールが検出されたことから、細胞膜を通過しオルガネラへの移行することが推察された。特に、ミトコンドリア画分での蓄積が多いことが示唆された。(4)フコキサンチノールがミトコンドリア画分に蓄積していた点に着目し、ミトコンドリア機能に関わるミトコンドリアDNA量の測定を行った。NASHモデルマウスの肝臓からDNAを抽出し測定を行った結果、普通食群と比較してNASH誘導色群でみられたミトコンドリアDNA量の低下が、フコキサンチンにより抑制された。(5)エネルギー代謝に関わる白色脂肪組織から褐色脂肪組織への転換メカニズムとして分泌因子を介した細胞間コミュニケーションについて調べた。その結果、BMPを介した組織転換制御の可能性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、これまで報告してきたフコキサンチンによる抗肥満作用やインスリン感受性の改善作用と免疫細胞の機能制御との関連を明らかにすることを目的として、マクロファージに加えT細胞サブセットへの影響を調べた。その結果として、マクロファージの極性制御に加え、T細胞サブセットの組織浸潤抑制への影響が推察された。今後は、白色脂肪細胞や肝臓などメタボリックシンドロームの発症・進行過程において慢性炎症が誘発される組織についてより詳細な免疫細胞分布を調べるとともに、それらの機能調節について継続して調べる必要がある。 一方、フコキサンチン代謝物がミトコンドリアやミクロソームなどのオルガネラに移行・蓄積することを明らかにした。これまでに、ミトコンドリアの機能不全に関わるインフラマソームの活性化によって誘導されるIL-1βの産生抑制を確認しており、オルガネラへの作用を介した免疫細胞に対する機能調節機構の解明が期待される。2022年度は、各免疫細胞サブセットを分離し、オルガネラへの影響を含めた機能調節について研究を展開させる計画である。 以上、現在までの進捗状況として、当初の計画通りおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は以下の計画で研究を進める。 ①生体内組織における免疫細胞サブセットの解析: これまでに、NASH誘導マウスにおける免疫細胞サブセットの分布への影響を明らかにするため、表面抗原などのmRNA発現に着目してRNA-Seqによる解析を進めている。本年度も引き続き解析を行う。また、フコキサンチンを投与した肥満マウスの白色脂肪組織についても同様の解析を進める。さらに、組織から非実質細胞画分を分離しFACS解析を行い、免疫細胞サブセットへの影響を明らかにする。 ②生体における免疫応答因子の産生調節機能の解明: これまで脂肪組織や肝臓のM1およびM2タイプのマクロファージが産生するサイトカイン量を調べてきたが、さらに、T細胞サブセットが産生する抗炎症性因子や炎症制御因子を測定し組織炎症への影響を調べる。 ③免疫細胞の機能調節に関わる細胞内情報伝達系制御: フコキサンチン代謝物による免疫細胞の分化調節やサイトカイン産生制御機構として、オルガネラコミニュケーションに関わるインフラマソームの活性化への影響を明らかにするため、構成タンパクとして小胞体上に存在するNLRP3やミトコンドリア上のASC等の発現量を測定し、活性化抑制を調べる。並行して、ミトコンドリアやミクロソーム画分を分画して、フコキサンチン代謝物の移行量を分析するとともに、活性酸素種の産生や小胞体ストレスの抑制など免疫機能制御に関わる細胞小器官への影響を調べ、情報伝達機構を明らかにする。 ④フコキサンチンの免疫細胞サブセットに対する機能調節の解明: 脂肪組織や肝臓から免疫細胞サブセットをMACS磁気カラムにて分離し、各細胞に対するフコキサンチン代謝物の機能制御を検討する。他のカロテノイドによる作用と比較しながら解析を進め、フコキサンチン代謝物による免疫細胞への直接作用および細胞間相互作用への影響について構造と関連付けて解明を進める。
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Research Products
(5 results)