2022 Fiscal Year Annual Research Report
The molecular basis for germ cell development in teleost fish
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21H02277
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 俊哉 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (10758056)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不妊化 / CRISPR-Cas13dシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、魚類における生殖細胞形成に必要な分子基盤の解明が第1の目的であり、その知見を元に幅広い魚類において不妊化可能な技術開発を行うことか第2の目的である。 2022年度には生殖細胞形成に必須なdnd1遺伝子の共通性の高い配列をターゲットとするgRNAを設計し、CRISPR-Cas13dシステムを用いたノックダウンにより汎用性高く魚類の不妊化が可能か検証した。魚類dnd1遺伝子(72種80遺伝子)において100%マッチした標的配列は存在しなかったため、配列保存性の高い領域を選択し、魚種グループごと(例、サケ科魚類)の配列をもとに共通gRNAを設計した。そして、それらをメダカ受精卵にインジェクションし、生殖細胞の欠損を指標にノックダウンが可能か調査した。メダカdnd1に対して、1塩基のミスマッチがある魚種グループ(サケ科、カワスズメ科、マグロ属、ブリ属)のgRNAでは、ノックダウン効率は減少するもののメダカの生殖細胞の欠損を確認できたが、2塩基のミスマッチ(コイ科)があるgRNAでは、ノックダウンを確認できなかった。1塩基のミスマッチのgRNAについて、stem loop部位に変異を加えたところ、不妊化効率が上昇した。さらに、サケ科魚類共通のgRNAをニジマス受精卵にインジェクションしたところ80%以上の効率で生殖細胞が欠損した。以上の結果からCRISPR-Cas13dシステムによるdnd1のノックダウンが養殖魚の不妊化に有効であり、さらに、本研究で設計した共通gRNA により幅広い魚種での不妊化が可能であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR-Cas13dシステムにおける共通gRNAを用いたdnd1遺伝子のノックダウンにより汎用性高く魚類の不妊化が可能であることを示せた。さらにgRNAにstem-loopを改変することで不妊化効率が上昇したため、魚類における効率的なノックダウン法も見出せた。しかし、第1の目的である、生殖細胞形成機構の分子基盤の解明については、生殖細胞形成に必要な新規遺伝子の同定までに至っていないので、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖細胞形成に必要な分子基盤を明らかにするために、2022年度には、免疫沈降法を用いて生殖細胞形成に必須なDND1タンパク質と相互作用するmRNAを同定する予定であったが、作製した抗DND1抗体が免疫沈降に用いることができなかった。そこで、2023年度には、dnd1とEGFPの融合タンパク質を発現するmRNAをメダカ胚にインジェクションし、市販のEGFP抗体を用いて、DND1と相互作用するmRNAの同定をRNAseq(RIP-seq)で行う予定である。また、CRISPR-Cas9システムを利用したノックインによりdnd1とEGFPの融合タンパク質を発現するトランスジェニックメダカを作出し、その初期胚を用いて同実験を試みる。 そして、作製済み始原生殖細胞(PGC)の遺伝子発現プロファイルと比較することで生殖細胞形成に必要な候補因子の絞り込みを行い、CRISRP-Cas13dシステムによるノックダウンスクリーニングで新規遺伝子の同定を目指す。さらに新規遺伝子の魚類共通配列に対するgRNAを設計することで、汎用性高く魚類の不妊化が可能か検証する。
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Research Products
(8 results)