2022 Fiscal Year Annual Research Report
加齢性筋萎縮・再生不全の先駆的理解と栄養機能学的制御
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21H02347
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辰巳 隆一 九州大学, 農学研究院, 教授 (40250493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 崇 九州大学, 農学研究院, 助教 (20380553)
鈴木 貴弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80750877)
前原 一満 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (90726431)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋幹細胞 / 活性化因子HGF / ニトロ化 / 加齢性筋萎縮・再生不全 / 筋線維型 |
Outline of Annual Research Achievements |
若齢期(2か月齢)、成熟期(10か月齢)および老齢期(20か月齢)のS.D.系雄ラット(n=3 /グループ)を用いて、筋線維の細胞外マトリックス(ECM)に結合・保持されている肝細胞増殖因子 (HGF;筋幹細胞活性化因子) のニトロ化・不活化が、加齢に伴い進行・蓄積することを初年度に明らかにしたので、次に、この加齢性現象と筋線維型(速筋型 (IIa, IIx, IIb)・遅筋型)との関連性を詳細に調べた。後肢下腿部の“ふくらはぎ”の筋であるヒフク筋・足底筋・ヒラメ筋および“すね”の筋である前脛骨筋・EDL筋の凍結切片を抗ミオシン重鎖アイソフォームモノクローナル抗体を用いて筋線維型を可視化したところ、速筋型 のIIa型と IIx型 でHGFのニトロ化が顕著に進行・蓄積することを見出した(いずれの筋においても遅筋型およびIIb型ではHGFのニトロ化は微弱もしくは検出されなかった)。ヒトにおいてはIIb型の筋線維は殆ど存在しないことを考え合わせると、上記の結果は、加齢性筋萎縮が速筋(速筋型筋線維が優勢な筋)で顕著に進行することと良く符合した。 また、第2の課題である「ニトロ化に伴うHGFの構造変化(仮説)」に関しては、昨年度整備した、受容体結合ドメインを含むN末端領域ペプチドの合成系を改良し(合成・発現量の向上)、高解像度の構造解析に必要な結晶化法を至適化する作業を開始した。 第3の課題である「脱ニトロ化酵素遺伝子の同定」に関しては、昨年度の文献検索に引き続き、候補遺伝子の数を更に増やすことに注力した。最終年度に実施予定の大型コンピューター解析を含むin silico hybridization法によって当該遺伝子候補が高精度で選抜されることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に掲げた「筋幹細胞活性化因子HGF)のニトロ化・不活化が加齢に伴い進行・蓄積する」ことを明らかにすることができた他、この現象が速筋型のIIx, IIa型筋線維で顕著に進行・蓄積することを見出した。また、「ニトロ化に伴うHGFの構造変化(仮説)」を検証するため、受容体結合ドメインを含むN末端領域ペプチドの合成系を改良し、ペプチドの結晶化に必要な条件を整えた。また、文献検索により脱ニトロ化酵素遺伝子の候補を更に増やすことができ、in silico hybridization法による当該遺伝子候補の選択精度が大きく向上すると期待された。更には、HGFのニトロ化を抑制する化合物を見出すことがでこたので、動物投与実験によりその効果を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第1課題(加齢に伴う筋幹細胞活性化因子HGF のニトロ化・不活化と筋線維型との関係性)は概ね達成できたと判断し、最終年度は、主に第2、3の課題に注力する予定である。即ち、第2課題に関しては、ペプチド結晶化法の至適化と構造解析、第3課題に関しては、準備が整い次第、in silico hybridization法を用いて新奇遺伝子を同定する作業を開始する予定である。候補遺伝子が絞りきれない場合には、古生物であるアーキアの抽出物から脱ニトロ化酵素活性を有するタンパク質を分画・精製する作業を急ぎ追加実施し、当該遺伝子の同定に全力をあげる(未知の遺伝子数は約600であるので真核細胞より相対的に容易であると予想される)。
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