2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of temporal and spatial control of mRNA translation that is mediated by subcellular structures and novel RNA processing
Project/Area Number |
21H02398
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小谷 友也 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70419852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雄広 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50383774)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 卵母細胞 / mRNA / 翻訳制御 / 細胞内微細構造 / RNAプロセシング |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の受精卵は、翻訳を抑制した数千種類の mRNA を順次決まった時期に翻訳し、発生現象を進行する。しかし、それぞれの mRNA の翻訳の重要性と、その翻訳を正確に制御する仕組みはほとんど分かっていない。本研究は、受精後の個体形成において翻訳制御が果たす役割と、これら一連の生命現象における翻訳制御システムの原理を解き明かすことを目的とする。昨年度までに、pou5f3 mRNA は卵形成から受精後の卵割期まで顆粒状構造を維持し、なおかつ、卵割期に顆粒内で Pou5f3 タンパク質を合成することを示した。本年度は、pou5f3 の RNA 顆粒が、どのような原理で翻訳の抑制型から活性型へと変化するのか、また、顆粒内でタンパク質を合成する意義について解析した。液滴を拡散させるヘキサンジオールで受精卵と卵割期の胚を処理した結果、抑制型の顆粒は固相様の性質を示し、活性化型の顆粒は液相様の性質を示すことが明らかとなった。液相様の顆粒を拡散し、Puro-PLA 法で新規合成される Pou5f3 を検出した結果、シグナルがほとんど検出されなくなった。従って、顆粒構造は pou5f3 mRNA の翻訳効率を上昇させる役割があると推測される。 本年度はさらに、pou5f3 mRNA の 3'末端が削除される現象と翻訳の活性化の関係を詳細に解析した。レポーター mRNA を発現するゼブラフィッシュの解析から、3'末端が長い mRNA は卵割期に翻訳されず、3'末端が短い mRNA は活発に翻訳されることが明らかとなった。反対に内在の pou5f3 mRNA の 3'末端の削除を阻害すると、タンパク質の合成が著しく減少した。これらの成果は、受精後の mRNA の翻訳が新規の分子機構で制御されることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、pou5f3 mRNA の翻訳制御機構の解析によって、「固相様の顆粒構造による翻訳の抑制と液相への変化による翻訳の活性化」という新たな翻訳制御機構の存在を示すに至った。この原理は pou5f3 mRNA 以外の mRNA でも保存されていること、さらに動物種を超えてこの機構が保存されていることを示唆する結果を得ている。さらに、これらの成果を論文に取りまとめ、すでに生命科学・物理科学・地球科学の総合誌 iScience 誌に登載された。本年度は、さらに pou5f3 mRNA の 3'末端の削除が翻訳の活性化に重要であることを示すに至った。以上の理由から、上記の評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって、受精後の翻訳制御機構についてその一端が明らかとなってきた。しかし、数千種もの mRNA が受精後に決められた時期に翻訳される仕組みはまだほとんどが不明のままである。今後は、pou5f3 mRNA の 3'末端配列がどのような分子機構で短縮されるのか、また、短縮されることでどのように翻訳が活性化するのか、その分子機構を解析する。また、この現象の普遍性について迫る予定である。
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Research Products
(9 results)