2021 Fiscal Year Annual Research Report
Transmission of SARS-CoV-2 and influenza viruses
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21H03184
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
中屋 隆明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80271633)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 伝播機構 / 飛沫 / コロナウイルス / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究実績の概要は以下のとおりである。 高病原性鳥インフルエンザH5N1の環境中及びヒト生体(皮膚)上の安定性および消毒薬(エタノール)耐性が他のインフルエンザウイルスと比較して高いことを論文発表(Emerg Infect Dis.)した。さらにウイルス側要因としてNAが重要であることを示唆する結果を得た。また、確立したヒト生体(皮膚)モデルを用いて、エタノールやイソプロパノールに加えて、非アルコール系のグルコン酸クロルヘキシジン・塩化ベンザルコニウムがSARS-CoV-2およびインフルエンザウイルスに対する消毒効果が見られる条件を評価し、これら消毒薬の手指衛生に関する提案を論文発表(Clin Microbiol Infect.)した。さらに、上記ウイルスについて、消毒薬に対する(塗布後乾燥した条件での)残留効果を評価し、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール系消毒薬には残留消毒効果がほとんど認められなかった一方で、グルコン酸クロルヘキシジン・塩化ベンザルコニウムなどの消毒薬には残留消毒効果が認められたことを論文発表(Environ Sci Technol.)した。この評価システムを用いて、普通紙やインクジェット紙など種々の紙に付着したウイルスの感染保持時間を測定し、論文発表(J Infect Chemother)した。 加えて、SARS-CoV-2と同じベータコロナウイルス属・HCoV-OC43のVero-TMPRSS2細胞を用いた細胞傷害性(TCID50)評価システムを確立し、論文発表(mSphere)した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度実施計画の「H5N1ウイルスの生体表面および環境中安定性に関与するウイルス側因子の同定」について進展があり、既に論文発表という成果を得たことを踏まえて2022年度に予定しているNAの機能解析を前倒しした。その研究課題である「H5N1ウイルスのどの遺伝子が環境中(構造)安定性に寄与するか」について解明できれば、本研究目的である「インフルエンザウイルスのヒト間伝播機構の解明」がさらに加速すると期待されることから、NAの機能解析の研究のための前倒し使用申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究実施計画に記載した以下の研究内容を遂行したいと考えている。 1.「コロナウイルスの生体(皮膚)表面および環境中におけるウイルス粒子安定性の解析」コロナウイルスの環境下での感染力の経時変化(残存性)を解析する。また、これまでに報告されている疫学上懸念されるSARS-CoV-2変異ウイルス(VOC)を用いた解析を行い、進化に伴うウイルス粒子の環境中安定性の変遷を評価する。また、従来の非アルコール系の消毒薬の(皮膚上における)抗ウイルス作用についても評価を行う。 2.「H5N1ウイルスの生体表面および環境中安定性に関与するウイルス側因子の同定」 H5N1鳥インフルエンザウイルスでは、他のインフルエンザウイルスに比べて、皮膚表面および物質における残存性が高いことを2021年度に報告した(Emerg Infect Dis. 2022 Mar;28(3):639-649. doi: 10.3201/eid2803.211752.)。そこで現在はH5N1の環境中安定性のウイルス側要因の解明に関する研究を進めている。特に、H5N1と他のH5亜型との組換えウイルスを用いて、粒子構造に直接関係するHA、NA、M(構造タンパク質)に着目し、「H5N1ウイルスのどの遺伝子が環境中(構造)安定性に寄与するか」について解明することを計画している。 3.「COVID-19感染者におけるウイルス変異の意義を探求する研究」主に長期間ウイルスを保持している(免疫抑制下の)感染者におけるウイルス遺伝子型の経時的変化を解析し、ウイルス変異の同定とその意義を評価する。
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Research Products
(6 results)