2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of co-production method of key industrial raw materials and heavy metal adsorbents from biomass waste
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21H03638
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
望月 友貴 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (90546087)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオマス / 塩素化 / 吸着剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では籾殻中に多量に含まれるSiO2、炭素とCl2ガスを利用した炭素還元/塩素化反応の組み合わせにより籾殻からの(i)基幹産業原料であるSiCl4の高効率製造/分離回収と(ii)重金属吸着剤としての塩素化残渣(Cl 担持炭素) の有効利用を可能とする「バイオマス廃棄物からの有用原料と重金属吸着剤のコプロダクション法の開発」を目標に掲げる。具体的には、①籾殻から高収率・高純度でSi を揮発分離可能な最適条件と塩素化機構の解明と②Cl 担持炭素の重金属吸着時のCl 使用率≧100%を達成可能な最適操作条件とそれらの吸着機構の解明を行う。籾殻は安定的に年間生産量にも関わらず難分解性/高灰(Si) 分等の理由から農業廃棄物として埋立/焼却処理されているSi 資源である。一方で、資源を保有しない我が国は様々な産業から排出される廃水中の有用金属を分離回収・循環利用する必要がある。本提案法は籾殻の有効利用と廃水からの金属回収問題の同時解決に寄与可能と期待される。得られる成果は農業廃棄物、資源確保、水処理問題の解決に寄与できることから、その社会的意義は極めて大きい。 令和3年度は主に籾殻からの籾殻の塩素化処理に重点を置いた検討を行った。籾殻から高効率でSiを回収するために、籾殻を炭化してSiO2とCの近接化を図った。次いで炭化物(チャー)の塩素化時のSi揮発率を温度、保持時間等をパラメーターとして変化させて調べた結果、最適なチャー調製温度:800oC, 塩素化処理条件:1000oC, 10min保持であることを見出した。上記条件で籾殻チャー中のSiの80%以上を揮発分離可能であった。塩素化処理時の固相中のCl含有量の温度依存性を調べた結果、Cl量は600oCまでに22wt%に増大し、その後温度増加で減少したものの、上記最適条件下でも10%程度のClが固相に残存していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「バイオマス廃棄物からの有用原料と重金属吸着剤のコプロダクション法の開発」を行う。具体的には、籾殻中に多量に含まれる SiO2、炭素とCl2ガスを利用した炭素還元/塩素化反応の組み合わせにより、籾殻から基幹産業原料であるSiCl4の高効率分離回収と重金属吸着剤としての塩素化残渣(Cl担持炭素)の有効利用を可能とするための制御因子と反応機構を解明する。 令和3年度は塩素化処理による籾殻からのSi分離法の確立に重点を置いた。まず、400-900oCで籾殻を熱処理して調製したチャーを1000oCで塩素化処理した時のSi揮発率から最適チャー調製条件の検討を行った。その結果、800oC以上で調製したチャーでSi揮発率が75%以上となったことからチャー調製条件を800oC とした。次に、塩素化温度依存性を調べた結果、チャー中のSiは400oC以上から揮発し始め、1000oCまでに75%を固相から分離できた。更に1000oCで0-60min保持を行うと10minまでにSi揮発率は85%に達した。チャー中のPはSiと類似の揮発挙動を示し、Na,Kは900oC以上でほぼ100%揮発した。一方、Ca,Mgの揮発率は1000oC,10min保持で5-25%と小さいものであった。塩素化時の固相のCl量の変化を調べたところ、600oCまでにCl量は増大(22wt%)し、その後温度の減少で低下する傾向を示し、1000oC,10min保持では10wt% 程度となった。Cl量が最大となる600oCで塩素化処理を終了し、その後N2中で1000oCまで加熱した時のSi揮発量を調べたものの、揮発の進行は認められなかった。つまり、炭素質物質に取り込まれたCl種とSiの固固反応による塩素化反応は生じていないことが明らかになった。以上の結果から最適なチャー調製と塩素化条件を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の研究に依ると、籾殻チャーを塩素化処理した後の固体残渣は溶液中の水銀イオンに対して高い吸着性能を示す。これは塩素化時に残渣中の炭素質物質上に取り込まれたCl種とHgイオンの反応による吸着であると考えられているが、その詳細は不明である。重金属吸着剤としてCl 担持炭素(塩素化残渣)を利用するためには、最適なCl 担持炭素調製条件に加え、塩素化時の詳細な反応機構解明とCl担持炭素のキャラクタリゼーションが必須である。そこで塩素化処理時に副生したCl 担持炭素のキャラクタリゼーションを行なう。上記で調製した塩素化残渣をXRD/ラマン分光、N2吸着分析に供し、SiO2, C 化学形態と細孔性状を調べる。また、籾殻チャーと脱灰処理したチャーの塩素化時のCl 量の変化を自動燃焼装置付きイオンクロマトグラフィーで測定する。各試料へのCl 吸着形態はX 線光電子分光計(XPS) で定性的に評価する。塩素化時のC 上へのCl の吸着挙動とその反応機構を定量的に明らかにする。更に、上記Cl に関する分析は塩素化残渣を水処理して得た試料に対しても実施し、Cl吸着形態の解明と重金属吸着実験での吸着剤設計と吸着機構解明の指針とする。反応機構の理解のため、塩素化前後の試料/水処理前後の塩素化残渣をTPO/TPD 法に供し、活性サイトを定性/定量的に評価する。また、XPS 分析のみでは詳細な形態解明が不可能なことが考えられるため、塩素化残渣を10%H2/N2 中で加熱した時のHCl の脱離挙動(HCl-TPD) を現有のHCl 分析計でオンライン分析し、その脱離挙動から吸着したCl の化学形態と反応性を評価する。得られた結果を総合し、籾殻チャーの塩素化時の反応機構の解明を行う。上記結果は、重金属イオン吸着剤の性能制御因子解明の指針とする。
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Research Products
(1 results)