2022 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Studies on Inclusiveness and Exclusiveness of Sharing of Technologies in East African Small and Medium-sized Manufacturers
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21H03706
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 基樹 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (30273808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手上 和代 明治学院大学, 国際学部, 講師 (00838435)
町北 朋洋 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (70377042)
福西 隆弘 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター, 主任調査研究員 (80450526)
山田 肖子 名古屋大学, アジア共創教育研究機構(国際), 教授 (90377143)
松原 加奈 東京理科大学, 経営学部国際デザイン経営学科, 助教 (80962547)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 技術共有 / 開放性と閉鎖性 / 労働者の移籍の自由 / 集積地 / 民族の同一性 / 世代 / デザインの開発 / 職業訓練 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、対象の東アフリカ諸国のうちエチオピアの調査を強化するため、同国の革靴製造業の研究を専門としている、松原加奈東京理科大学助教が分担者に参加した。 本年度は夏季に入って以降、コロナ禍の影響が弱まり、東アフリカへの渡航が容易になった。そのことを受けて、9月にケニア・ナイロビにおいて金属加工業、ソファ製造業、さらに10月以降、ウガンダ・カンパラにおいてものづくりのための職業訓練について調査を行った。また2月には、ケニア・ナイロビにおいてソファ製造業、革靴製造業、エチオピア・アディスアベバにおいて革靴製造業、ウガンダ・カンパラにおいてものづくり職業訓練の調査を引き続き行った。 これらの調査活動を通じて、技術共有が開放的である場合と、閉鎖的な場合との違いやその背景を考えるのに適した事例を発見することができた。 そのうちの一つである、ケニアのソファ製造業の事例で低所得者向けのソファを各事業者が共通のデザインで生産している集積地では、とりわけ同じ民族の間で技術が広く共有されていた。そこでは、労働者が異なる事業者のために働くことが許容されていた。他方で、高所得者向けのソファを生産している別の集積地ではデザインの差別化が進んでいるが、年配の多数派民族の間では、前者の集積地と同様の技術共有が見られる一方で、少数派の民族の出身の若手の事業者は、頻繁に新しいデザインの開発に取り組んでおり、新しいデザインの他事業者による模倣を防止ないし、遅らせようとしていた。そのための一手段として、従業員の他事業者のための労働を禁じて、新しいデザインの製法などの技術情報を流出させまいとしていた。 こうした知見をはじめとする本研究の成果を、国際開発学会、日本アフリカ学会の大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には、予定していた現地調査を実施できなかった。そのために同年度において、実証的に明らかにすることを計画していた課題を2022年度に持ち越さざるを得なかった。しかし、2022年度には、コロナ禍の沈静化により、ケニア、ウガンダ、エチオピアの3カ国において、ソファ製造業、金属加工業、革靴製造業、職業訓練などについての調査を精力的に行うことができた。これにより、国境を越えて多様なものづくりの業種のケースを対象とすることが可能となり、かつまたそれぞれについて知見を得ることができた。とりわけ、上述のケニアのソファ製造業におけるように、異なる顧客層を対象とし、製品の差別化の程度も異なる別々の集積地の間で、技術共有の開放性と閉鎖性が異なることが分かった。また民族や世代の同一性によって、同じく開放性と閉鎖性が規定されることが推測できた。このような知見及び推測を、対象事例とすることができた上記の他の国ないし業種に適用することによって、その実証的な正しさと普遍性とを検証できる。これによって、2021年度から持ち越した課題を解決し、当初2022年度に予定していた研究計画通りに、実施することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本研究の最終年度にあたる。上述のような2022年度までの成果を踏まえて、同じ業種でありながら、製品の差別化、民族の同一性・多様性、世代の多様性などにおいて異なる条件の下にある、事業者の集積地や集団を相互に比較して、その条件が事業者間の技術共有の開放性と閉鎖性にどのように影響するのかを、実証的に析出する。その作業は、研究が最も進んでいるケニアのソファ製造業でさらに進めていく。並行して、上述のような、製品の差別化、民族の同一性・多様性、世代の多様性などの条件の技術共有の開放性・閉鎖性への影響を、他の地域や業種について観察し、その影響にどこまで普遍性があるのかを検討する。このことによって、研究開始当初に目指していた、技術共有の開放性と閉鎖性を規定する要因の解明を、複数の国と業種にわたって進めることができる。また、本研究での成果を、日本の学界だけでなく、ケニア、エチオピア、ウガンダなど東アフリカ諸国、さらにはアフリカ諸国全体や世界各国の学界に対して発信し、本研究での成果を世界中の知的な共有財産とし、批判を乞う。こうした内外との対話を通じ、アフリカの製造業において新しい技術や知識の共有が開放的となり、全体の生産性向上につながることと、それらが閉鎖的であるが故に、個別の事業者が自己利益を追求しやすくなり、研究開発が進展しやすくなることとの兼ね合いをどのように考えるべきかを、最終年度である今年度の知見のまとめとして、考察していく。
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