2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a time and space analytical system for metabolome in living mouse brain using a real-time mass spectrometry and its evaluation of its practicality
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21H03793
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
財津 桂 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30700546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤本 和延 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90282350)
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
江口 盛一郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80648650)
高橋 一誠 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (90897034)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 時空間メタボローム解析 / リアルタイム計測 / バイオンインフォマティクス / 時系列解析 / 情報科学 / 生体医工学 / 医工連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマウス胎児脳のリアルタイム測定技術の開発(研究代表者・財津)、時系列データ解析法の構築(財津、研究分担者・井口)、解析手法のUI開発(研究分担者・高橋)、手法を適用するモデルマウスの構築(研究分担者・澤本および江口)を行った。従来、財津が開発した装置(K. Zaitsu et al. Anal Chem 2016および2018)では、脳の1箇所からしかモニタリングできず、対象成分数も10成分が限界であった。そこで、脳の複数個所から40成分の代謝物をリアルタイムで測定できる装置を新たに開発した。昨今の半導体不足の影響を受け、当初の計画では装置開発が遅延する恐れが生じたことから、短期で入手可能な半導体を使用する方針に変更し、それに応じて制御用ソフトウェアも修正することで本年度内に装置を開発することに成功した。開発した装置には、複数の新機構を実装することにも成功した。特に、超長距離焦点レンズを用いて測定を実施したい複数の位置をPC上で決定することができるようにした。測定したい脳の位置を複数点決定すると、座標情報が制御用PCに取り込まれ、マウスを固定しているステージに伝達され、座標情報に応じてステージが自動的に制御されることで、複数の脳部位からリアルタイム測定を行うことができる。一方で得られる時系列データの解析法の高度化も進めた。リアルタイム計測から得られる時系列データに対してベイズ統計モデリングによる状態空間モデルを適用した手法を開発した。さらに高橋は解析手法のUI開発を行い、webアプリケーションのβ版を実装することに成功した。β版のwebアプリケーションでは直感的にデータ解析を実行することが可能となり、作業効率が大幅に改善された。また、研究分担者・澤本および江口は、上記手法を適用するためのモデル動物(胎児モデルおよび脳腫瘍モデル)の条件検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時空間メタボローム解析の達成に不可欠な基盤技術の開発が概ね順調に進展した。上述の通り、昨今の半導体チップ不足の影響を大きく受け、開発が遅延する恐れが多大に生じたが、比較的短期間に入手が可能な半導体チップに設計を柔軟に変更し、さらに、それに応じてソフトウェアの開発を修正したことが功を奏し、本年度内に新たな装置を開発することに成功した。また、時空間メタボローム解析から得られる時系列データの解析手法として、ベイズ統計モデリングによる状態空間モデルを適用する手法を開発することにも成功した。今後、本手法を多変量データ解析に展開することで、時空間時系列データの解析が可能になると考えられる。さらに現在、時系列データの因果解析を行う手法も実装中であり、時空間メタボローム解析で実際のプレデータが得られれば、解析手法の有効性を検証していく計画である。また、解析手法の操作性と効率性を高めるために、UI開発を進めてきたが、webアプリケーションを用いたβ版の実装が可能となり、解析手法の汎用性を高めることにも成功した。開発したβ版は次年度に国際学会での発表および論文投稿を行う準備を進めている。また時空間メタボローム解析を実施するモデル動物についても準備を進めており、特に現在、マウス胎児を装置へ固定するための手法構築に加え、脳表層に腫瘍を発現させる手法とその評価法の検討を継続して行っている。 なお、本年度で代表研究者が異動することになったため、異動元・異動先の事務の皆様の非常に懇切かつ迅速なご協力を頂戴し、本研究で使用する装置類などの移設手続きを本年度内に完了し、スムーズに異動先での研究継続が可能な環境を達成できた。このおかげで、次年度初頭に機器類のセットアップを迅速に進めることができるため、本研究の遂行には全く支障が生じないように環境を整備することが可能と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した装置を用いて、時空間メタボローム解析法の実証試験、解析手法の構築、モデル動物の準備を並行して進めていく。まず、時空間メタボローム解析の実施のためには研究代表者・財津の異動先で、装置のセットアップ作業を迅速に進める必要があるため、次年度初頭にセットアップを完了する予定である。また、機器類のセットアップが速やかに完了すれば、解剖で採取したマウスの脳試料を用いて、新たに開発した装置の条件検討をオフラインで実施する。具体的にはサンプリング位置のPCへの取り込みと実際の穿刺位置の精度確認、質量分析計へのデータ取り込み周期などを最適化していく予定である。このオフラインでの条件検討が完了次第、生きたマウスに適用するための条件を検討していく。特に、生きたマウスへ適用する場合、脳の毛細血管を穿刺しないようにする必要がある。そこで、モデル動物(マウス胎児および脳腫瘍モデルマウス)ごとに穿刺位置を決定する方針である。また、時空間メタボローム解析のデータ解析を行うため、位置情報を加味した時系列データ解析手法の開発を統計解析言語RおよびPythonを用いて行う。特に、得られた時空間情報間の因果関係を表出する手法を導入する。既に因果関係を表出するためのプログラミング実装を進めているが、実際の時空間解析データに適用するための前処理条件の検討を行っていく。また、解析のUI化をさらに推進し、webアプリケーションの高度化を実施していく。モデル動物については、マウス胎児の装置への固定法の確立と脳腫瘍モデルの脳表層での腫瘍形成の条件検討および評価法を進めていく。最終的に、次年度内において、時空間メタボローム解析の基礎条件の確立、解析手法の確立、モデル動物の確立と適用法の確立を目指す。得られたデータなどについては関連の学会などで発表を実施し、論文報告も積極的に推進していく方針である。
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Research Products
(11 results)