2021 Fiscal Year Annual Research Report
薬物の中枢移行性予測を可能とする新規血液マーカーの開発
Project/Area Number |
21H04189
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鈴木 翔太 千葉大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬物の中枢移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの医薬品で起こりうる中枢神経系副作用の回避は重要な課題である。中枢神経系副作用は、薬物が中枢神経に移行して発現すると考えられており、薬物の中枢移行性を予測する有用なバイオマーカーが存在すれば、あらかじめ薬物の中枢移行リスクを評価し、副作用を回避することが可能と考えられる。薬物の中枢移行性を予測する指標として、髄液/血清アルブミン比(Q albumin: Qalb)が知られているが、Qalb算出のためには侵襲度の高い髄液採取が必要で汎用的ではない。そこで、より簡便で汎用性の高いQalbの代替となる薬物の中枢移行性を予測可能とする指標が必要となる。 本研究では、まずバンコマイシンとバルプロ酸の中枢移行性を評価した。その結果、バンコマイシンの髄液移行率は髄液蛋白/血清アルブミン比と統計学的に有意な正の相関を示した。一方で、バルプロ酸の髄液移行率は髄液蛋白/血清アルブミン比と有意な相関を示さなかった。我々はこのバルプロ酸に着目し、バルプロ酸の髄液移行率と血清アルブミン濃度との相関を解析したところ、統計学的に有意ではなかったものの負の相関の傾向が認められた。バルプロ酸のような蛋白結合率が高い (約90%)薬物の髄液移行率には血清遊離型分率の変動が影響する可能性が示唆された。薬物の血清遊離型分率は、血清アルブミン等のタンパク濃度の変動に影響を受けることが知られており、一般採血で高頻度に測定されるアルブミン濃度やその他の因子、総薬物濃度などの複数のパラメータを組み合わせて薬物の遊離型分率を予測することができれば、薬物の中枢移行性を予測する一つの指標になりうるものと考えられる。今後は、血清アルブミン濃度と総薬物濃度を組み合わせたパラメータなどのタンパク結合に影響を与え得る因子と薬物の遊離型分率との相関を明らかにすることで遊離型薬物濃度を予測する方法を検討していく予定である。
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