2021 Fiscal Year Annual Research Report
Connectivity of human and nature in the Himalaya: Comparison among three W-E regions
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21H04371
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邉 悌二 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40240501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 不可知 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (00822644)
韓 志昊 立教大学, 観光学部, 教授 (40409545)
渡辺 和之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
相馬 拓也 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (60779114)
アバタル ラム 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (90648057)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 持続可能な社会 / 山岳国立公園 / 土地劣悪化 / ポスト・コロナ観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(2021 年度)はコロナ禍の影響が懸念されたため,当初予定していた野外調査だけではなく,新たに室内作業を実施することで,全体の研究パフォーマンスを低下させないように対応した。具体的には,まず博士研究員を雇用し,関連文献の収集を行い,収集した文献の勉強会をオンラインで開催し,レビュー・メタ解析論文執筆を行った(Liang et al. 2022として公表済み)。また,収集した文献にメンバー全員がアクセスできるよう,オンライン文献アーカイブを作成した(ただし,著作権の問題があるため外部へは非公開としている)。 ネパールの2地域(サガルマータ国立公園およびカプタド国立公園)とパキスタンの1地域(フンジェラブ国立公園)について,リモートセンシング解析により作成した土地利用土地被覆図の改良作業を進めた(アバタル・渡辺)。特にフンジェラブ国立公園では,2022年6月に,現地調査によって土地利用土地被覆図の精度向上のためのデータを収集した(渡辺)。また,サガルマータ国立公園では,土地利用土地被覆図を用いて,現地調査に向けた土地荒廃サイトの抽出を行った(渡辺)。 また,2022年8月にサガルマータ国立公園南方にて,コロナ下およびコロナ後における生活と山岳観光の状況について聞き取りを行い,山道の拡幅作業を中心とする観光インフラの整備の進行状況を確認した(古川)。さらに,補完地域としてアンナプルナ周辺のサリジャ村,レスパル村,バランジャ村などの農山村を中心に,在来植物利用のエスノグラフィを記述した(相馬)。なお,一部の分担研究者の所属大学ではコロナ対策のため海外渡航が許可されなかった。 2021年に実施した成果の一部は,2021年9月実施の国際会議「3rd GLP Asia Conference」において,セッション提案を行い,採択されたセッションにおいて6件の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には海外渡航ができなかったため,室内作業に基づく研究を進めざるを得なかった。しかし,その結果,当初計画をしていなかった,関連研究のレビュー・メタ解析論文を執筆することができた。 2021年度予算の一部を2022年前半に繰り越して実施した研究では,室内作業と野外調査の両面から研究全体の加速化に注力した。海外渡航には多くの制約があり,調査は困難な状況に置かれた状況で進めねばならなかった(また,国際線航空運賃や現地での滞在費が予定を大きく上回る状況で予算面でも大きな困難に直面した)。さらに野外調査については,一部の大学で海外渡航の許可がおりなかった。しかしながら,全体としては,研究の中核となる3つの国立公園に加えて,補完地域(アンナプルナ,ドラカなど)においても,集中的にさまざまなデータ収集を行うことができた。これには,ネパールおよびパキスタンの国立公園に限らず,日本(北海道)および中国の国立公園(ジオパーク)との比較データの収集も含まれる。 また,これまでに得られた成果の一部を書籍として刊行するための議論を進め,日本地理学会英文叢書編集委員会への提案準備を開始した。研究の進捗状況が良いため,当初の全体計画よりも書籍の出版を早めて,最終年度中には出版ができるように準備を進めている。 さらに,国内外の学会などにおいて多くの成果の発表を行うにとどまらず,第3回GLP Asia Conferenceでは,セッション提案を行って,セッションの座長・発表を行い,また,国内の公共機関において研究者のみならず,一般市民向けの発表を行うなど,国内外への成果の発信も積極的に進めている。アンナプルナ・セチコーラ流域で実施した関連研究として,北海道大学に博士論文を提出した。 これらの進捗状況に基づき,2021年度予算を用いた研究は,現在までのところ,順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年10月から11月にかけて,カプタード国立公園とサガルマータ国立公園において,観光開発の現状と土地劣悪化に関する野外調査を行う(渡辺)。2023年2月から3月にかけて,サガルマータ国立公園で,村ごとのコモンズのあり方,家畜構成の変化(特にヤクと牛の交配に関するソル・クンブー・チベット間の関係)について調査する(渡辺和之)。ネパール西部カリガンダキ河流域では,伝統の養蜂技術,ハニーハンティング技術のデジタル記録と,蜜源植物の分布や開花状況などを調査する(相馬)。また,アンアンプルナABC Trek において観光開発にかかわる調査を行う(韓)。同期間に,ソルクンブ郡ソル地方において,コロナ下の生活に関する聞き取りと,車道開通による生活の変化について村の人たちから聞き取りを行う(古川)。 2022年12月1日から3日に,カトマンズで実施予定の国際会議において,成果の一部を公表するために,セッション提案を行い,そこでヒマラヤの専門家らと議論を行う(全員)。 その議論の結果を踏まえて,2023年1月から3月にかけて,土地利用土地被覆図の精度をさらに向上させるための解析作業を行う(アバタル・渡辺)。また,フンジェラブ国立公園の土地利用土地被覆図の作成を完了させた上で,その図の精度改善のための解析作業を2023年1月から3月にかけて行う。これらの情報を地理情報システム上で土地利用土地被覆図の精度向上のための解析作業に反映させる(既存の関連文献から得られる情報の解析を含む)作業を実施する。 2022年12月10日および11日に黒部で開催される「国際山岳年プラス20シンポジウムin黒部」にセッションチェアおよびパネリストとして参加し,ヒマラヤでの知見を一般社会に還元する(古川・渡辺)。また,2023年3月の日本地理学会において,成果の一部を発表する(渡辺)。
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Research Products
(20 results)