2021 Fiscal Year Annual Research Report
子ども・子育て家族の貧困と政策・実践:「包括的最低限保障」の構想のために
Project/Area Number |
21H04404
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 伊智朗 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (20199863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 あゆみ 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (10304221)
加藤 弘通 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20399231)
丸山 里美 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20584098)
大谷 和大 北海道大学, 教育学研究院, 講師 (20609680)
鳥山 まどか 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (40459962)
田中 智子 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (60413415)
上山 浩次郎 北海道大学, 教育学研究院, 講師 (60751089)
吉中 季子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (70434800)
大澤 真平 札幌学院大学, 人文学部, 准教授 (70598549)
川田 学 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (80403765)
新藤 こずえ 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (90433391)
鹿嶋 桃子 帯広大谷短期大学, その他部局等, 講師(移行) (20435209)
及川 智博 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (50879450)
小西 祐馬 長崎大学, 教育学部, 准教授 (90433458)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 貧困 / 子どもの貧困 / 家族 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、子ども・家族調査、障害児家族調査の二つの調査を実施すること、貧困観・福祉意識調査、当事者意識調査の理論的検討を行うこと、これらを進めるために対面の研究会を行うことが計画されていた。しかし新型コロナウイルス感染拡大による影響で、子ども・家族調査の一部と障害児調査は実施できず、次年度以降に持ち越すこととなった。また対面での研究会も開催できず、貧困観・福祉意識調査と当事者意識調査の本格的検討も次年度以降に延期することとなった。 子ども・家族調査は、対象は北海道内の2・5歳、小学2・5年生、中学2年生、高校2年生の子どもを養育する家族と、小5、中2、高2の子ども本人の合計約3万人で、北海道内当該人口の約10%に当たるものである。うち2・5歳の保護者調査は、自治体保健部局、保育所等が新型コロナウイルス感染拡大の影響で次年度に延期となり、小2以上の調査を実施した。道内の政令市、中核市、町村のいくつかを選定、人口に応じて調査対象数を設定、代表性を担保した。自治体の協力下で学校で調査票の配布、回収を行った。調査内容は所得、就労と時間、健康、家計、制度認知と利用、子どもの学習・学校経験、活動、進路希望等である。この調査は2016年度に実施されたものと同様の枠組みで実施されており、子どもの貧困に関する継続調査として全国的にも貴重である。集計と第一次分析の結果は、中間報告書(2022年度)に掲載した。 ほか、以下の2点を行った。①今回の調査結果と比較検討を行うために2016年度調査結果の分析を進めた(単行本として2022年度に刊行)。②子ども・家族調査、貧困観・福祉意識調査、当事者意識調査の分析枠組みの理論的検討の一貫として、イギリス「子どもの貧困アクショングループ」の著作を検討、翻訳し、「子どもの貧困とライフチャンス」として公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、①子ども・家族調査の2歳児、5歳児保護者分、②障害児家族調査が実施できず、2022年度に延期になったことが理由である。これを受けて、全体の分析作業も当初の見込みより遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は子ども・子育て家族の貧困の今日的な特徴を把握し、政策と実践のあり方を「包括的最低限保障」という観点から検討することである。そのために、子どもと家族の貧困の概要を把握する「子ども・家族調査」、反貧困政策の枠組みから排除されがちな領域である「障害児家族調査」、貧困経験の内実と主体的対応のあり方に焦点を当てる「子育て家族インタビュー調査」、一般人口の貧困観、福祉意識を通して「包括的最低限保障」の社会的合意形成の可能性を検討する「貧困観調査」、制度形成に貧困当事者の「声」を反映させる方略を検討する「当事者意識調査」を実施する。全体に通底する分析視点は、①経済的資源の不足がもたらす制約・不利はなにか、②国、自治体の制度のあり方と個人が直面する制約・不利はどのように関わっているか、③ジェンダーによる差異、不平等はどのような点に現れるか、という3点である。 前述のように、調査実施についてやや遅れが見られるものの、全体の目的、実施計画等に変更はない。今後、遅れている調査の実施に努めると同時に、「包括的最低限保障」の構想に向けた理論的検討に着手したい。
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