2021 Fiscal Year Annual Research Report
Clarification of propagation reaction for lignin formation by using artificial polysaccharide matrix
Project/Area Number |
21H04730
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浦木 康光 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90193961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
堤 祐司 九州大学, 農学研究院, 教授 (30236921)
玉井 裕 北海道大学, 農学研究院, 教授 (50281796)
綿岡 勲 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 准教授 (70314276)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞壁ミメティックス / ヘミセルロース / キシログルカン / リグニン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、3つの課題について検討を行い、以下の成果を得た。 1. rCWPO-Cの高純度化と多量発現:組換体大腸菌によるタンパク質の発現と精製工程にいて、TAPS化とリフォールディングの間に遠心分離を2回の行う操作を加えた。この結果、精製rCWPO-Cの収率を維持したまま、ペルオキシダーゼの精製度を示すRZ値が約1.5倍に増加し、比活性も約1.5倍の560μmol/min/mgまで向上した。 2.細胞壁構成多糖類間および多糖類-ペルオキシダーゼ間のの相互作用解析:木材のヘミセルロース(キシラン、グルコマンナン、キシログルカン)とセルロースとの相互作用を、平衡吸着実験と速度論的解析が可能なQCM-Dを用いて行った。両測定とも、キシログルカンがセルロースに最も吸着することが明らかとなった。また、Horseradish peroxidase(HRP)と多糖類との相互作用解析では、HRPはセルロースに対し、高い親和性を示すことも分かった。さらに、多糖類が脱水素重合体(DHP)の形成に及ぼす影響も調べ、キシログルカンがDHPを多量生成させ、加えて、5-5’縮合結合の形成も促進することが示された。この結果より、一次細胞壁が縮合構造に富む理由が解明できた。 3.高分子リグニンの蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の測定:FRET測定の最初の取り組みとして、固体試料を対象とした蛍光顕微鏡でFRETが示されているリグニンと蛍光試薬ローダミンとの相互作用を、溶液中で検出することから検討した。使用したリグニンは広葉樹のクラフトリグニンである。この測定の結果、プロピレングリコールを溶媒とする溶液中で、FRETを観測することができた。モノリグノールとクラフトリグニンとのFRETの検出を試みたが、どちらも蛍光強度が弱かったために、明確なFRET検出には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、次の3つの項目を検討課題として研究計画を立てた。1.多糖類マトリックスの調製2.CWPO-Cの大量発現3.モノリグノールと高分子リグニン間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の測定。 課題1と2は予定通り進行し、課題1では、次年度に計画していた相互作用解析も達成した。しかし、課題3に対しては、既に報告されているFRETは溶液のクラフトリグニンでも検出できたが、蛍光が弱いリグニン間では、未だ明確なFRETが検出できないために、上記の進行度合いとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、特に、次年度は、本年度の成果を基に、以下の2つの主要課題について、取り組む。 1.水溶性部分アセチル化キシラン存在下での脱水素重合体の調製とその分析:広葉樹由来のキシランを均一系でのアセチル化し、さらに、有機溶媒に溶解させたアセチル化キシランをナトリウムメトキシド等で脱アセチル化し、天然キシランで報告されている置換度0.7程度の部分アセチル化キシラン(PAC)を調製する。このPACの水溶性画分のみを取り出し、種々のモノリグノールの脱水素重合を行う。使用する酵素は、昨年度高純度精製に成功したリコンビナントのCWPO-Cと、西洋わさび由来のペルオキシダーゼ(HRP)を参照酵素として用いる。 得られた脱水素重合体(DHP)の構造を、ニトロベンゼン酸化と1H-NMRを組み合わせた分析法と、小角X線散乱を用いて解析する。必要に応じ て、DHPを分子量に応じて分画し、分画物の構造解析も行う。 2.モノリグノール間およびモノリグノールと高分子リグニン間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の測定:モノリグノールとクラフトリグニンとの間でFRETを検出するために、両者の濃度を高くすることを目的に、多価アルコールを溶媒とする濃厚溶液を、自転公転型ミキサーを用いて調製する。この溶液の蛍光を通常のキュベットを用いた測定、および、スライドガラスに挟んだプレパラートの反射法で観測する。さらに、バクテリアセルロース膜に、両成分を滴下し、乾燥後、固体の蛍光測定にも取り組む。
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Research Products
(4 results)