2021 Fiscal Year Annual Research Report
Light elements in the Earth's core revealed by ultrahigh-pressure experiments
Project/Area Number |
21H04968
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50270921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 健二 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20727218)
坂本 直哉 北海道大学, 創成研究機構, 助教 (30466429)
梅本 幸一郎 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (60726991)
圦本 尚義 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80191485)
Alfred Baron 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (90442920)
|
Project Period (FY) |
2021-05-18 – 2026-03-31
|
Keywords | コア / 軽元素 / 鉄合金 / 超高圧 / ダイヤモンドセル |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー加熱式ダイヤモンドセル(DAC)を用いて、液体と固体の鉄・鉄合金につき、高圧高温実験を行った。液体鉄合金の密度・速度に関する測定は本年度は特に液体FeOについて進めた。放射光施設SPring-8のビームラインBL10XUにおけるX線回折(XRD)測定により液体の密度を、同じくBL43LXUでX線非弾性散乱(IXS)法によって液体の縦波速度を決定することができた。鉄合金のリキダス相関係については、まずFe-H合金中の水素量の決定を目指し、北大の二次イオン質量分析法(SIMS)を使ったクライオ条件下での分析法の開発を進めた。その過程で、下部マントル鉱物であるCaCl2型とa-PbO2型のSiO2相に数wt%もの水が含まれること、さらに3000K以上の超高温でもその水はSiO2相から脱水しないことが思いがけず見つかった。さらにFe-C-O三成分系の実験も行い、200GPaまでのリキダス相関係を明らかにし、地球外核の可能な組成範囲を見積もって、コアに水素が不可欠であることを示した。固体鉄合金の密度については、SPring-8のBL10XUにおけるXRD測定により、固体FeHの密度をコアの高圧高温下で決定し、高温の状態方程式を得ることができた。固体鉄の音速については、SPring-8のBL43LXUにおけるIXS測定と長時間の安定した加熱が可能な内部抵抗加熱式DACを組み合わせ、高圧高温下での測定データが得られた。コア形成時の金属-シリケイト分配についても、BL10XUにおけるXRD測定と北大におけるSIMS測定の組み合わせによって、水素・炭素・硫黄の分配係数を同時に決定する実験を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理由は、当初予見していなかった成果として、沈み込む海洋プレート(スラブ)によってマントル深部へと輸送された水が、マントルの底の超高温下でもスラブから脱水しないことがわかったことにある。これにより、マントル最下部の大きな地震波速度異常の成因も見直す必要があることが明らかになった。従来、海洋プレートからの脱水がマントルの融解やコアとの化学反応を引き起こし、コア-マントル境界域に大きな地震波速度異常を作ると広く信じられてきた。実際、マントルの底付近には大きな地震波速度異常が数多く観測される。この異常の成因を理解することは、コアとマントルの相互作用や共進化を理解する上で極めて重要とされる。これまで、沈み込むスラブによって輸送されてきた水が、マントルの底の超高温下で脱水し、融解・物質移動・コアとの化学反応を起こした結果と解釈されることが多かった。しかしながら、今回の発見により、マントルの底の速度異常はスラブからの脱水とは無関係であり、代わりにマグマオーシャンの名残、もしくは高温のコアに加熱されたマントル側の融解に起因する可能性が高いことがわかった。この結果がマントル深部の地震学、地球化学、ダイナミクスの研究へ与えるインパクトは間違いなく大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の主目的である「コアの軽元素組成の解明」を進めるのに、鍵となるのが水素を含む鉄合金系の状態図の研究である。今後は、クライオ条件下でのSIMS分析を進め、Fe-H合金中の水素量を決定しつつ、状態図(具体的には、共融点組成、温度、固体-液体鉄間の水素の分配)を明らかにすることが肝要である。これにより、研究開始当初に見積もった、地球コアの軽元素組成の可能な範囲をかなり狭く制約することができるようになる。さらに、内核の地震学的観測を使った内核の軽元素組成の制約に向け、固体鉄の密度・速度の精密測定をさらに高圧高温へ拡張する必要がある。同時に、内核の可能な軽元素組成から元素分配係数を用いて外核の可能な組成範囲を見積もることが重要である。それには、固体鉄-液体間の軽元素の分配をできるだけ高圧で、しかも軽元素同士の相互作用も考慮して決定することが今後大切である。その他、当初の計画に基づき、液体・固体の鉄合金の特性、鉄合金多成分系のリキダス相関係、シリケイト-金属間の軽元素の分配を、高圧実験・熱力学計算・第一原理計算を駆使して明らかにしていく。
|
Research Products
(42 results)