2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J10251
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
渡 勇輝 佛教大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 柳田国男 / 近代神道 / 近世国学 / 平田篤胤 / 大国隆正 / 宮地厳夫 / 平田派 / 心霊研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、主に柳田国男の学問形成期となる明治末期から大正期の論考を同時代的な神道言説と比較しながら検討した。 とくに考察の中心となったのは、明治45年(1912)の「塚と森の話」である。同論を同時代の神社政策や史蹟保存運動という状況のなかから再検討することで、同論が柳田のその後の学問にとって重要な位置にあったのみならず、近世の知と繋がりつつ、新しい歴史学の動向と重なっていたことを指摘した。この内容は、2021年11月に日本思想史研究会で口頭発表し、2022年3月に『日本思想史研究会会報』第38号に論文として掲載された。 また、これまで柳田の学問が漠然と「平田国学」と関連づけられてきたことに対して、柳田の「平田派」理解を手がかりとして、大国隆正と宮地厳夫という二つの思想的系譜を取り出し、当該期における知のネットワークの動態を検討した。この内容は、2022年3月に日本宗教民俗学会で口頭発表しており、2022年度中に論集に掲載される予定である。 さらに、前述の宮地厳夫の系譜をたどるうえで、柳田の学知が心霊研究の世界と深く関わっていることがわかってきた。当該期における柳田受容のひろがりとして、2022年1月に日本心霊学会の動向を研究会で口頭発表し、この内容は2022年度中に論集に掲載される予定である。 そのほか、研究課題と関連したテーマ報告として2021年8月に口頭発表を行い、2021年11月には受入研究機関において研究課題の経過についてポスター報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、論文が1本掲載され、ほかに執筆した論文も次年度になるものの論集へ2本の掲載が予定されているため、おおむね順調に進展していると評価する。とくに本研究課題遂行の過程で、心霊研究と神道論という開始当初の研究テーマをこえた領域との接点がみつかったことは大きな成果であり、今後より深めていく可能性のある研究課題の発見につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、柳田国男の大正期から昭和前期の論考を同時代の神道言説と比較しながら検討する。とくに、柳田の学問形成期以来、複雑な関係を築いてきた加藤玄智を主たる比較対象とすることで、当該期における神道論の立体的な把握を試みる。また、2021年度においては新型コロナウイルス感染症の影響により十分な資料調査を行うことができなかったため、2022年度は積極的な資料調査を行い、研究を進めていく所存である。
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Research Products
(5 results)