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2021 Fiscal Year Annual Research Report

中英語宗教文学に引用されるラテン語箴言の修辞学的機能と文化史的背景に関する研究

Research Project

Project/Area Number 21J10285
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

西川 雄太  慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2021-04-28 – 2023-03-31
Keywords中英宗教・教化文学 / ラテン語箴言 / 農夫ピアズ / 一般信徒のための教理問答 / カトーの2行連句 / 説教 / 中世後期イングランド
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、13世紀から15世紀の中英語宗教文学作品に引用されるラテン語箴言の特性を、中世ラテン語による教化文学との接点において明らかにし、中世後期英文学史上で再評価するものである。本年は研究の1年目であるため、(1)事前準備として行っていた研究の英語論文化と、(2)新たな中英語・中世ラテン語テクストの選定・精読により、ラテン語箴言が引用される具体例の収集を行った。
(1)14世紀後半にウィリアム・ラングランドが中英語で執筆した宗教寓意詩『農夫ピアズ』にはラテン語句が数多く引用されており、それらの多くはキリスト教的教訓を伝達する媒体として機能している。特に13世紀以降の西ヨーロッパ各地に普及した新説教形式との類似が指摘されているCテクスト第1歌と第10歌では、主題聖句となるラテン語句には、聖書や世俗由来を問わずラテン語箴言が用いられていることが明らかとなった。この特徴はまた同時代に中英語で書かれたウィクリフ派説教にも認められ、一般信徒に向けた俗語作品においては、主題聖句と化したラテン語箴言を繰り返し提示することによって、キリスト教的教訓の伝達方法を簡素化し、一般信徒の理解を助けるという傾向を提示した。この成果は英語論文として公表した。
(2)14世紀後半に中英語で執筆された司牧のための手引書(ジョン・マーク『教区司祭のための手引書』と『一般信徒のための教理問答』など)を精読を行い、ラテン語箴言の引用例を集めた。中でも慶應義塾図書館所蔵の15世紀半ばに制作された中英語宗教・教化文学アンソロジー(ホプトン・ホール写本)に収録された『一般信徒のための教理問答』の7つの罪源のひとつである憤怒の解説箇所に、『カトーの2行連句』に由来するラテン語箴言が挿入されていることを確認した。このようなラテン語箴言の利用には、一般信徒によるカテキズム学習を促進する狙いがあることを口頭発表で提示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

新型コロナウィルス感染症の影響により、英国内の図書館での写本調査を実施することができなかった。その代替策として大英図書館が所蔵する写本のマイクロフィルムをPDF化したものをいくつか取り寄せることはできたが、手元に届くまでに想定以上の期間を要し、また画像も鮮明でない部分が多かったため転写と分析にも時間を要した。
しかし、当初予定していなかった慶應義塾図書館所蔵の写本(ホプトン・ホール写本)を閲覧する機会を得られ、この写本に収録された『一般信徒のための教理問答』には本研究と関連の深いラテン語箴言の引用を確認することができた。この成果の一部は2021年12月のシンポジウムで報告し、日本語論文として進める準備を進めている。
また当初予定していた『農夫ピアズ』に引用されるラテン語箴言についての英語論文は順調に完成し、2021年度内に公刊された。

Strategy for Future Research Activity

次年度は以下の計画で遂行する。
(1)中英語・ラテン語テクストの精読
次年度はラテン語箴言の教化的側面に着目し、引用例の分析と典拠となるラテン語テクストとの比較分析を行う。具体的には『信者の覚書』を分析の中心に据えて関連するラテン語テクスト(トマス・オブ・チョバム『告解大全』、カンタベリー大司教聖エドマンド『教会の鏡』など)との比較分析を行い、さらにはディヴォーショナルな教化文学作品(具体的には『聖霊の修道院』や『聖霊の修道院のための憲章』など)も加える予定である。
(2)写本調査
本研究が分析対象とするテクストは未刊行のものが多いため、英国内の主要図書館での写本調査が急務である。新型コロナウィルス感染症の動向次第にはなるが、デジタル画像の取り寄せも選択肢の一つとして、現地調査の日程を調整する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2021

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Thema, Divisio and Exempla in the C-Text of Piers Plowman: Passus I. 81-203 and X. 20-552021

    • Author(s)
      Nishikawa, Yuta
    • Journal Title

      藝文研究

      Volume: 120 Pages: 27-40

    • Open Access
  • [Presentation] カテキズムの改変―ホプトン・ホール写本の『一般信徒のための教理問答』と読者層2021

    • Author(s)
      西川 雄太
    • Organizer
      Remo研シンポジウム2021「東西中世における修道院・寺社の書物文化─制作・教育・世界観の変容」

URL: 

Published: 2023-12-25  

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