2021 Fiscal Year Annual Research Report
白亜紀獣脚類における移動能力の進化傾向ー環境変動との対応を探る試みー
Project/Area Number |
21J12938
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 孝太 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 生物進化 / 中生代 / 脊椎動物 / 獣脚類 / 高速化 / 進化発生学 / 機能形態学 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、足部骨格の形態発生機構の解明と内耳・足部骨格の強度計算のプレデータを得るという二点に注力した。獣脚類特有の特殊な足部の形態発生を解明する上で、東京大にてニワトリの足部の筋骨格系の発生過程解析を実施した。その結果、特殊型の足部骨格形成に関わる筋肉の発生様式を見出すことに成功し、現在国際誌へ投稿する準備に入っている。また修士研究として行った獣脚類新種の記載分類学的研究もまた国際誌へ投稿準備に入っている。三半規管の敏捷性の指標抽出のため、オープンソースで公開されている鳥類・ワニ類・非鳥類型恐竜類などの化石種の内耳モデルを取得し、形態計測を行った。その結果、三半規管内部のリンパ液の挙動に関わる半規管と膨大部の断面積の比に、飛行様式の異なる鳥類間で違いがあることが見出された。この関係性を利用し、絶滅した化石爬虫類・恐竜類への応用するデータセットの構築を目指す。また岡山理科大学博物館にて、所蔵されているモンゴル産の獣脚類化石について観察・計測・撮影を行った。形態計測方法の検討も行うことができ、来年度の標本調査に際する手順が確立できたと考えている。また文献調査を展開することで、画像上の中足骨からも強度計測に必要な計測値を取得できた。そのため、今後化石標本からの直接計測及び文献データから幅広い獣脚類の足部の強度データを得る下準備が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から着手を始めたニワトリの発生解析により、研究の要である獣脚類の特殊化した足部の形態発生機構の手がかりを突き止められ、現在共同研究者と共に論文化に着手できた。
さらに同時並行で内耳形態解析にも進展できた。昨年度出版された論文から、オープンソースでさまざまな絶滅獣脚類・現生鳥類・爬虫類の内耳形態データがアクセス可能となり、これらを用いた形態解析を行い、注目していた形質と敏捷性の関係性を見出すことにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の予定としては、抽出・算出した三半規管の敏捷性の形質及び足部の強度形質を獣脚類の系統樹上で進化プロセスを復元し、獣脚類の高速化の進化史の解明に着手する。またこれまでの研究成果を、日本古生物学会・日本進化学会・Sovciety of Vertebrate Paleontology (トロント・カナダ)での発表を予定している。さらに、研究成果の論文化に集中する予定である。
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