2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of magmatic and growth processes in small plutonic bodies into batholiths
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21J13600
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
江島 圭祐 山口大学, 創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | バソリス / 小規模岩体 / High-Mg andesite / High-Mg diorite / 野外調査 / マグマ過程 / 岩体成長過程 / slab rollback |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2021年度)は主として本研究の軸である野外調査を約60日程度実施した.対象地域は北部九州に産する尺岳閃緑岩体(福岡県),尺岳北部半深成岩体(福岡県)および北多久苦鉄質複合岩体(佐賀県)であり,それぞれの地域の岩相または地質状況を理解した. 尺岳閃緑岩体の野外調査では,岩体への供給岩脈や同一岩石内での漸移的な岩相変化およびメータースケールからミリスケールのシート状構造を見出すことができた.そして,これらのデータとサンプリングによって得られる位置データを持つ岩石化学データから岩体の成長過程と岩相変化過程の3次元的なモデルを構築した. 尺岳北部半深成岩体の野外調査では,半深成岩と母岩の泥質岩が混在するぺぺライト状の産状を見出したほか,半深成岩体のマグマ過程に対して深成作用と熱水変質作用,内的な作用(マグマ溜まり内の閉鎖系)と外的な作用(同開放系)を統合した解析法を開発するなど,これまでの研究にはない独自の検討に取り組んでいる. 北多久苦鉄質複合岩体の野外調査では,北部九州には稀な苦鉄質から超苦鉄質の岩石の特徴や性質を理解することができた.また,単斜輝石に着目し,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)を用いた鉱物の微量元素組成分析を実施した.その結果,北多久苦鉄質複合岩体に産する岩相は同一のマグマに由来し,そのマグマはSanukitic HMA(サヌキティック高マグネシウム安山岩)に類似することが明らかとなった. 上記の各検討で得られた小岩体の岩石学的データと北部九州に産する火成岩,変成岩および堆積岩のジルコンU-Pb年代値の空間変化から北部九州白亜紀火成活動はSlab rollbackがトリガーとなり引き起こされたという予察的見解が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(2021年度)の研究計画は,1)北部九州バソリスを構成する複数の小岩体(花崗閃緑岩体と高マグネシウム閃緑岩体)の活動年代を含めた成因関係の検討,2)バソリスマグマの供給システム解明に展開可能な小岩体の内部構造と成長・成熟過程の検討および3)バソリスマグマの発生機構を含む地殻深部情報の検討の3つを予定していた.1)検討に関しては野外産状や鏡下情報を含む基礎データからモード組成,全岩・鉱物化学組成,同位体組成およびジルコンU-Pb年代値の化学的データまでのデータセットを取得することができた.これらのデータの合計は1500以上にもなり,小岩体の詳細なマグマ過程を編むことができた.なかでも,野外産状と岩石化学データの両者の情報が齟齬なく理解することができ,より再現度の高いマグマ過程を構築できたことは評価に能う結果である.また, 2)の検討に関しては尺岳閃緑岩体の詳細な野外調査から,シル(水平の岩脈)の積み重なりが岩体の成長要素である三次元的な成長モデルを提案した.3)の検討に関しては中部地殻以深(>25 km)に定置したとされる北多久苦鉄質複合岩体を調査した.その結果,北多久苦鉄質複合岩体は4種の集積岩と3種の斑れい岩で構成され,全岩・鉱物化学組成およびLA-ICP-MSによる単斜輝石の微量元素組成から同源マグマ由来であることとそのマグマはSanukitic HMAに類似することが明らかになった.また,野外産状では母岩である角閃岩と北多久苦鉄質複合岩体の境界部にミグマタイトを見出し,そのミグマタイトと計算によって得られた苦鉄質岩の初生メルト組成から花崗岩質マグマの発生機構を地殻物質の部分溶融と部分溶融メルトと熱源マグマ(Sanukitic HMA)の混合が強く影響していると結論づけた.以上を総合的に評価すると,全体の研究計画としては概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は基本的に当初の計画通りに研究を進める予定であるが,以下の点において研究計画を変更する必要があると考える. 上述のように,本年度は北多久苦鉄質複合岩体の調査および検討において北部九州バソリスの本質マグマやそのテクトニックセッティングを考察する上で非常に重要なデータを得ることができた.また,岩体の成長過程の検討においても,野外産状と位置データを有する大量の岩石化学的データが本年度中に集まっている.そこで,当初の計画で岩体の成長過程の検討を深めるために予定していた岩石の帯磁率異方性の検討を中止する.その代わり,北多久苦鉄質複合岩体で得られたマグマの発生機構を含む北部九州バソリスの熱源マグマ(Sanukitic HMA)のデータと同時代に活動(噴出)した火山岩の岩石学的特徴を比較してバソリスを形成する本源マグマの特性を明らかにする.具体的には,北部九州に点在する白亜紀の高マグネシウム閃緑岩(HMD)と比較可能な高マグネシウム安山岩(HMA)を野外調査で見出し,その化学的特徴から,白亜紀HMAマグマの空間的な広がりを検証する.さらに,各小岩体の野外産状と位置データを有する大量の岩石化学的データから岩体の成長過程に関しても補完する検討を実施する.具体的には,岩石試料の採集地点・高度や岩石化学データなど様々なパラメータを組み合わせることで,岩体の水平および鉛直方向の岩相変化を検討し,岩体の三次元的な内部構造の形成過程にも迫る.したがって,2022年度は上記のような研究計画を変更することによって,本研究課題の解明に加速度的な動きを与えたいと考える.
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Research Products
(3 results)