2021 Fiscal Year Annual Research Report
泥炭保全ガバナンスによる泥炭社会の変動:インドネシア,リアウ州の事例
Project/Area Number |
21J15132
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加反 真帆 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 自然資源ガバナンス / エリートキャプチャー / 泥炭保全ガバナンス / 住民参加 / インドネシア / 所得格差 / 公平性 / 村落エリート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,泥炭保全ガバナンスのパラドックスを実証するため,インドネシアにおける泥炭保全ガバナンスが泥炭社会に与えた影響を包括的に解明することを目的としている。2021年度は,インドネシアで現地調査を実施することができなかった。そこで,2018年11月から2020年3月に実施した現地調査の結果の分析および分析結果をまとめた投稿論文の執筆,さらに必要に応じて追加のオンライン調査を実施した。 はじめに,泥炭保全ガバナンスは,あらゆるアクターの参加と連携による泥炭回復と地域社会経済の再活性化を前提としている。本研究の調査地R村では,上記の方針の下,地方NGOや企業が地域住民と連携し,泥炭回復や地域社会経済の再活性化を目的としたプログラムを実施していた。しかし,調査結果から,再活性化を目的としたプログラムの利益は,火災による生計悪化のリスクが高い「泥炭地のみを保有する世帯」ではなく,「非泥炭地を保有する世帯」に集中し,村落内部の世帯間格差が拡大したことが明らかとなった。一方,泥炭回復を目的としたプログラムの利益は,ボランティア組織である消防団に集中していた。外部アクターと積極的に連携する村落消防団の活動により,調査地における火災発生件数は減少傾向にあった。しかし,村落泥炭保全の鍵を握る消防団が,地方NGOや企業から利益を獲得し続けていることで,非裨益者の保全への意欲低下を助長したことも明らかとなった。今後は,泥炭保全を含む自然資源管理を目的としたプログラムの実施において,外部アクターによる固定的で排他的な担い手選定は,エリート・キャプチャーという問題をもたらし,その持続性を阻む要因になり得るという仮説の検証を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響を受け、インドネシアにおける現地調査の開始時期が計画よりも遅れたから。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、2023年3月までに行った現地調査の結果をもとに、必要に応じて追加の調査を行いながら成果として博士論文にまとめる。
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