2021 Fiscal Year Annual Research Report
Test of interaction types of new physics using semileptonic decay of B mesons
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21J15570
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
児島 一輝 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | R(D*)測定手法の開発 / レプトン普遍性 / 粒子識別装置 / ビームバックグラウンド測定 / Belle II実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はB中間子のセミレプトニック崩壊の崩壊分岐比の比の1つR(D*)の測定のための解析フレームワークの構築を概ね完了した.信号事象の選別条件をシミュレーションデータを用いて最適化するとともに,信号事象抽出で必要となる以下2点の開発を完了した.現在これらの結果から信号事象抽出手法の開発を進め,性能評価を実行している. (1)信号事象抽出に用いる2変数における信号事象と背景事象の識別能力向上.識別変数の1つである「再構成に使用されなかった電磁カロリメータのエネルギーの和」がBelle II実験の事象再構成において先行研究よりも分解能が悪いことを明らかにした.さらに,この原因がカロリメータとハドロン相互作用で生じたクラスターにあることを特定し,クラスターとハドロン飛跡間の距離を用いてそれらを排除することで信号事象におけるエネルギーの分解能を向上させることを示した. また,信号事象の選別を強化するためにFastBDTを用いた多変量解析ツールを開発し,欠損質量のみの識別を超える信号事象の識別性能を実現した. (2)最大の背景事象である偽D*中間子を含む背景事象収量の制御.信号領域とは別に偽D*中間子が多く含まれる領域をシミュレーションの較正用に設定することで,シミュレーションで見積もった偽D*中間子含む背景事象の収量を実データを使い精度良く較正した. これらに加え,Belle II検出器の安定的なデータ取得において懸念となっていた粒子識別装置TOPカウンターへのビームバックグラウンドの影響をビーム電流の関数として定量的に見積もった.陽電子ビームが2 Aに達するまで粒子識別性能維持のためのビームバックグラウンド量の上限値を下回る予想であり,2022年度までのビーム運転において十分に運用可能であることを示した.この成果は国際会議EPS-HEP2021で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
B→D*τν崩壊を信号事象とするR(D*)測定の解析フレームワークの構築については概ね完了したものの,B→Dτν崩壊を信号事象とするR(D)測定およびR(D(*))の運動量移行分布の測定のための解析フレームワークの構築が未完了である. これは【研究実績の概要】で記述した各研究項目において以下の課題に時間を要したためである. (1)識別変数「再構成に使用されなかった電磁カロリメータのエネルギーの和」分解能向上の研究.この変数は主にD中間子の励起状態を含むB中間子のセミレプトニック崩壊に由来する背景事象を識別することを目的としたものである.この背景事象の分岐比や形状因子の不定性は主要な系統誤差の原因であり,十分な精度で測定するためには分解能低下を抑えることが重要である.そこで,Belle II実験における分解能低下の原因特定を行うとともに,再構成ソフトウェアを改良することで分解能向上のための研究を実施した. (2)D*中間子の質量差分布の信号領域にピークする背景事象に関する研究.再構成ソフトウェアで信号領域にピークする背景事象分類される事象が先行研究のBelle実験よりも顕著に見られ,改善のための調査とその取り扱いを考慮した較正手法を研究した. 以上の研究に加え,2021年夏までの取得データ量が当初の目標に及ばなかったため,2021年度はBelle II実験のデータを解析した測定を早期に実現することを目的としてより統計精度の見込めるR(D*)測定実現のための研究に注力した.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度夏の国際会議においてBelle II実験の実データを用いたR(D*)測定の結果公表を目指す.そのために,現在性能を評価している信号事象抽出手法の開発を完了し,R(D*)測定における系統誤差の評価手法を確立する. その後,R(D*)測定のために構築した解析フレームワークを拡張することでR(D(*))測定およびR(D(*))の運動量移行分布の解析手法を確立する.信号抽出における識別変数「再構成に使用されなかった電磁カロリメータのエネルギーの和」に含まれるクラスターの選別条件最適化による識別能力強化,信号事象識別用多変量解析のトレーニング手法改善による性能向上および実データを使った制御モードの導入による系統誤差の評価手法改善により測定精度向上を目指す.運動量移行分布測定では新物理相互作用を含むシミュレーションを用いた測定感度の評価も実施する. そして,2022年夏までに取得予定の480 fb-1のデータを使用し,R(D(*))およびその運動量移行分布を測定する.
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