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2022 Fiscal Year Research-status Report

環境倫理学における〈教育倫理学〉の理論的基礎づけ―“涵養としての環境倫理”の提起

Research Project

Project/Area Number 21K00012
Research InstitutionNagasaki University

Principal Investigator

関 陽子 (山村陽子)  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00596421)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords暴力 / ためらい / 獣害問題
Outline of Annual Research Achievements

本年度も教育実践に関する活動には制約があったため、基本的な理論研究に重心をややずらした。自然に対する人間の関わりを〈暴力〉という観点から捉え、〈暴力の意味〉と教育の役割について検討した。〈暴力〉に着目するのは、自然保護は必ずしも開発や殺傷を避けるという意味での保護だけでなく、殺傷など「避けられない暴力」があるためである。ただし戦争のような暴力(殺すための暴力)と、自然に対する暴力(生きるための暴力)がどのように異なるのかを、暴力の意味論として考察した。
手がかりとした理論や思想は、バタイユやカミュ、レヴィナス、日本の思想などで、本年度はとくにカミュと九鬼周造の「ためらい」や「いき」に着目した。こうした中庸的な感性は、暴力(他者を支配すること)の是非を判断する手前で、それを認識しつつも拒否するあり方、ないし感性であると結論づけた。ただ、暴力の「ためらい」や「いき」が伝統的な倫理学にどのように位置づけられるのか、たとえば経験か生得的かといった点は十分に明らかにすることはできなかった。一方で、「ためらい」の中庸性が暴力に対峙する態度となるためには、日常生活や身体といった、他者性を経験する実践的基礎が不可欠であると指摘した。
以上を倫理の教育論と接続させるならば、倫理学は自由や公正もしくは功利などの理論的検討から整然とした解答を導くに留めることなく、倫理学的正しさ・善さそのものを批判的に捉える「ためらい」の感性を、身体的次元から理論的に検討し、倫理学のうちに意義付けてゆく必要があると考えられた。以上の主張の根拠でもあり、倫理的涵養の実践でもあるフィールドスクール(獣害問題や獣害対策の実情を学び、野生動物の捕獲や解体、利活用についての総合的な実習を行う)を本年度も実施した。今後も「自身の暴力へのためらい」について考え・感じることのできるものとなるよう、引き続き実施してゆく。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度も引き続き新型コロナウイルスや鳥インフルエンザ等の関係で教育実践が制限されたことや、自身(研究代表者)の手術・入院のため後半数か月は休業せざるをえなかった。その分は翌年の計画に盛り込むこととし、本年度は可能な範囲でのフィールドスクールの企画運営と、倫理学に関する理論的検討を、哲学的議論からより深めた。倫理学における教育の必要性を単に示すだけでは、倫理学的経験論を強調するだけのようになるため、「倫理がどのように生じるか」に注目しながら理論研究を行った。
またフィールドスクールについては、自身(研究代表者)も狩猟免許を取得するなどして地域での活動の幅を広げ、学生の理解や経験に応じた内容になるように内容を見直して実施した。加えて、まだ途中段階ではあるものの、これまでの参加者のレポート内容を分析し、フィールドスクールを通じてどのような変化があったかに着目しながらデータをまとめつつある。

Strategy for Future Research Activity

最終年度にあっては、フィールドスクール(教育実践)の効果を具体的に示すことができるようなデータのとりまとめを行いたい。こうした実践面の成果を理論研究に活かすことで、より説得力ある内容にしてゆきたい。とくに倫理がどのように生じるのかについての哲学的考察を行うとともに、逆にどのような実践であることが「倫理の保全」にとって有益なのかについて検討しまとめたい。
また理論面の研究では、引き続き「暴力の意味」をテーマとして、現在の世界情勢をふまえた考察を積極的に行うこととする。暴力の哲学はおもに現代思想を参照していることから、これらの理解を深めるとともに、その現代的意義を環境哲学の枠組みから検討する。身体性を基盤とする環境倫理(人間と自然との関係性に関する倫理)が、人間の倫理とどのように関連するかを明らかにしてゆきたい。

Causes of Carryover

研究代表者の手術・入院のため、すべての業務を一時休業したために生じた。年度末に理論的なまとめを考察する機会に使用予定であったことから、そのまま次年度に書籍等の購入費用としてあて、研究考察のために使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 「ためらい」と「いき」―倫理の外側のモラル2022

    • Author(s)
      関陽子
    • Journal Title

      環境思想・教育研究

      Volume: 15 Pages: 91-99

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2023-12-25  

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