2022 Fiscal Year Research-status Report
新儒家牟宗三思想の研究――儒教哲学・宋明思想研究を中心に
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21K00050
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 倫明 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (40867454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 牟宗三 / 宋明思想 / 道徳説 / 理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、具体的に以下の5点について解明せんとするものである。(1)牟宗三は儒教文献をどのように解釈することで中国思想の中に「道徳的形而上学」(道徳をベースとした形而上学)、すなわち道徳即宗教という「道徳的宗教」の存在及びその歴史的な流れ(道統)を見出していったのか、(2)牟宗三は、宋明思想の文献をどのように解釈・整理することで、宋明思想を三系統に分け、程頤・朱熹の系統を支流とする斬新な学説を導き出していったのか、(3)牟宗三は宋明思想における「理」をどのように分析、解釈しているのか、(4)牟宗三の思想・立場と他の新儒家(梁漱溟、熊十力、唐君毅、徐復観など)の思想・立場にはどのような異同があるのか、(5)牟宗三の構築した儒教哲学にはどのような現代的な意味、可能性があるのか。 第2年度は、『牟宗三全集』全32巻など、第1年度に購入・収集した関連資料に基づき、上記の(3)の問題について研究を進めた。特に牟宗三が朱子の道徳説をどのように捉えているのか、牟宗三による朱子『孟子』解釈批判を通して、その理解の特質と妥当性について検証を行った。その研究成果の一部は、台湾及び中国の学会で発表し、「朱子心性論的建構与対《孟子》的詮釈」(『中国心学』第2輯、商務印書館、2022年8月、pp.91-112)、「朱子的《孟子》詮釋與心性論的建構」(李威熊主編『第十二屆中國經學國際學術研討會論文選集』、萬巻樓、2023年3月、pp.303-327)に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連文献の収集、読解は概ね順調に進んでいるが、予定していた『心體與性體』第一部「総論」部分の翻訳が、現時点で五分の二程度までしか進んでおらず、ペースを上げて作業を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
作業の遅れている『心體與性體』の翻訳を精力的に進め、今後2年以内に完成できるようにしたい。 また、本研究が解明を目指している研究課題5点のうち、現時点でまだ十分考察の及んでいない(2)牟宗三の思想・立場と他の新儒家(梁漱溟、熊十力、唐君毅、徐復観など)の思想・立場にはどのような異同があるのか、(3)牟宗三の構築した儒教哲学にはどのような現代的な意味、可能性があるのか、といった問題について解明を図りたい。牟氏の著作は大部であるので、引き続き、読解を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
計画していた物品費の使用ができなかったため、次年度に改めて物品費に含めて使用予定。
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