2021 Fiscal Year Research-status Report
The problem of Legislator in French Enlightenment : foundation of political autonomy in respect to society, religion and history
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21K00083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王寺 賢太 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90402809)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス啓蒙 / モンテスキュー / ルソー / ディドロ / 歴史叙述 / 政治思想 / 立法者 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、①モンテスキューの『法の精神』の法論と一般精神論を検討し、モンテスキューにおいては、法が第一義的には統治者=立法者を拘束する自然的・社会的諸関係の総体であること、この諸関係についての探究が「法の精神」と「一般精神」という二つの極をもっていること、そこで立法行為を含む「統治」は、諸関係の総体としての「社会」が自己に再帰的に関係する政治的自律の回路によって規制されることを明らかにした。 ②ルソーについては初期の歴史論・政治論についての読解を進め、『人間不平等起源論』で「純粋自然状態」から出発する人類の社会状態成立史とその最終的な戦争状態への再転落の仮説的歴史を、ホッブズ的な契約論とモンテスキュー的な歴史主義を同時に批判するものとして位置づけた。この観点からすると、『不平等起源論』は社会状態成立の偶然性と、詐欺師=富める立法者による所有権の創設移行の社会状態の展開の必然性を描き出すことで、ルソーが歴史的因果性の支配の外に契約による正統な国制の設立を求める端緒となる。また『政治経済論』における民主政的統治論からルソー独自の主権論が派生する過程を位置づけ、この著作における立法者の形象の登場に『社会契約論』につながる正統な国家の創設の問題系の浮上を確認した。 ③ディドロについては、刊行中のGuillaume-Thomas Raynal, Histoire philosophique et politique des etablissemens et du commerce des deux Indes批評校訂版第四巻の編集にG. Goggiとともに携わり、アメリカ合衆国独立にかかわる第18篇の批評校訂と解題の執筆を行った。 ①、②は2022年度刊行予定の著書に収録予定、③は2022年秋にスイス・フェルネ―の国際18世紀研究センターから刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初モンテスキュー研究に宛てられる予定であった初年度の研究だが、著書刊行や批評校訂版出版の要請もあり、ルソーやディドロについても範囲を拡大して研究を行った。著書の原稿執筆は、モンテスキュー論、ルソー論まで進捗しており、ほぼ順調に進展している。『両インド史』批評校訂版刊行についてもすでに原稿の提出は終え、校正の段階まで進んでいる。 初年度はコロナ感染症下につき、当初予定していたフランスでの資料調査を行えなかったが、特に大きな問題なく研究を進めている。その分、科学研究費はその大半を書籍購入に宛て、個人使用の書籍の他、所属する東京大学人文社会系研究科のフランス18世紀関係の原典・研究書の収集を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究第二年度は、本来ルソー研究を中心に進行する予定だったが、初年度の計画が変更されたため、ルソーに関しては『社会契約論』を『政治経済論』以来の正統な国制の創設についての考察として捉え、契約・立法・政府の設立の分節とともに、とりわけこの「権利上」の正統な国制のプランの叙述と、この叙述が呼び込む歴史過程の記述に注目しながら読解を進める。 また、モンテスキューについては『法の精神』第六部のフランス王国起源論を検討し、ブーランヴィリエのゲルマン起源説とデュボスのローマ起源説のあいだで、モンテスキューがいかに「歴史的」にフランク族のガリア定着を描こうとしたか、その歴史認識が統治行為論・立法行為論といかにかかわるかに焦点を当てたい。 さらに研究の進捗が許すなら、『百科全書』期以来のディドロの政治思想と歴史叙述の検討に取り掛かる。対象となるのは、『百科全書』の諸項目と、1772年の『政治的断章』、および1770年代のロシア関係著作である。ここでは通俗的名理解に反して、ディドロの反啓蒙専制主義とモンテスキュー流の歴史主義の批判的受容に焦点を当てる。
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Remarks |
スイス・フェルネ―、国際18世紀研究センター、レナル『両インド史』批評校訂版紹介頁
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Research Products
(7 results)