2023 Fiscal Year Research-status Report
The Intellectual Environment of the American Revolutionary Leadership: A Study of Intellectualism in Colonial America
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21K00098
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石川 敬史 帝京大学, 文学部, 教授 (40374178)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アメリカ政治思想史 / 権力分立論 / 混合政体論 / アメリカ合衆国憲法 / 連邦政府 / 複合国家論 / アメリカ帝国論 / ジョン・アダムズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカ革命の指導的知識人の知的環境を考察することを通して、イギリス領13植民地のイギリスからの分離・独立からアメリカ合衆国の建国を導いた指導者層の政治思想を歴史的に跡付けることを目指したものである。具体的には、研究代表者がこれまで研究したジョン・アダムズの政治思想とその政治家としての活動を中心に、その政治思想の一貫性と表現の変遷、さらにはアダムズの評価の変遷を中心に再検討を行い、ヨーロッパ政治思想がどのようにアメリカに受容され、アメリカという環境で変容したのかを明らかにすることを通して、アメリカ革命の政治思想史を総合的に研究することを企図した。これは当然ながら、アダムズの同僚あるいは政敵となった指導者たちの政治思想との比較研究を行うことが必要になる。 本研究課題への接近方法として、主に二つの観点から検討を進めた。まず第一に、イギリス領北アメリカ植民地の人々が同時代のヨーロッパの政治思想をどのように理解し、それをヨーロッパとは異なる環境のアメリカに適合させようとしたのかを検討するものであり、第二に、それをアメリカ革命史という歴史的文脈の中で再評価することを試みることである。こうした接近方法を採用した理由は、植民地時代のアメリカが極めて知性主義的環境にあり、アメリカ革命指導者層がヨーロッパの古代から彼らの同時代までの政治思想をどのように理解したかを明らかにすることに有効であると考えられたからであり、さらに思想家ではなく政治家であった彼らがその政治的立場からヨーロッパ政治思想をどのように変容させたのかを検討することを通して、アメリカの内政と外交の状況をより解析度の高いものにできると考えられたからである。 政治思想史の方法と歴史学の方法の融合を目指した本研究はアメリカ政治思想史研究を再構築する試みであったが、革命論とデモクラシー論に新たな視座を提供できる可能性を開いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と自己評価した理由は、申請当初に期待された成果を超えた研究課題の発見に至ったことにある。それは、革命論とデモクラシー論に新たな視座を提起できるという可能性である。当初の期待は、あくまでアメリカ政治思想史の再構築であり、その下準備はおおむね順調に進めており活字化・学会報告に耐えるものにできたと考えているが、より普遍的な政治思想的課題の存在に気づくことができた。 2023年度の研究成果自体は多くはないが、この間に論文の執筆および学会報告の準備を行なっており、それは2024年度に具体的な成果として公表されると考えている。また、本研究計画それ自体の研究期間を超えて、行うべき研究活動の基盤を築くことができるた考えているからである。 本研究課題は、植民地時代アメリカの知性主義を考察するものであったが、この研究成果を基盤として、これまで世界的にも研究の進捗が遅れていたジョン・アダムズの著作の日本語訳が必要であること、および今日以降のアメリカ政治史を理解するためのアメリカ革命論の可能性に気づくことができた。本研究課題を遂行することによって、次の研究課題を発見することができたことは、それ自体が大きな研究成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究期間の最終年度に当たる2024年度は、学術的論文・論考・エッセイの執筆にあると考えている。これは2023年度から準備を進めてきたものであり、具体的な成果物を生み出す過程を通して、研究をさらに推進するとともに、本研究課題の一定の総括を行うつもりである。これまでは蓄積を中心とした研究活動だったが、2024年度は発表を中心とする研究活動に移行する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2022年度までの蓄積中心の研究文献の分析作業を中心に行なっていたため、図書の購入をあまり行わなかったことと、学務の多忙および体調不良により国内学会・研究会への出張への出席回数が減ったためである。 研究計画最終年度の2024年は、発表を中心としたものにする予定であり、そのために必要な文献が多数あり、また学会・研究会への出張が増えるので、そのために有効に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)