2021 Fiscal Year Research-status Report
3D計測による縄文・弥生・古墳時代の土器装飾を貫流する「文様破調」の実態解明
Project/Area Number |
21K00156
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
石井 匠 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 科研費支援研究員 (70638478)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3D写真計測 / 3Dモデル / 文様破調 / 芸術考古学 / 美術考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の縄文土器や弥生土器をフォーカスする博物館・美術館の展覧会は、両者の違いを際立たせる対置展示と各時代固有の美を称揚する展示に分かれる。どちらも、展覧会企画者の考古学者達の念頭には各時代間の美の断絶が想定されており、その背後には「狩猟採集民社会→農耕民社会→王権社会」という発展段階説に裏打ちされた「過去<現在」という価値尺度のバイアスと、これと相即不離の「未開<文明、周縁<中央」という根強い差別意識が見え隠れする。問題は、本来、各時代の美を構成する要素の共通性と差異を解明する美術考古学的な問いに立脚するはずの議論が、政治的な価値比重の議論にすり替えられ、違いばかりが注視されることにある。 本研究では、各時代の土器面全域の装飾文様に焦点を当て、これまで看過されてきた縄文・弥生・古墳時代の美に貫流する共通の要素と目される「文様破調」(土器面を帯状に周回する連続文様の反復リズムを意図的に一か所で崩すもの)に注目し、3Dモデルを用いて土器面全域の文様構造を多視点から分析することで、その実態を明らかにし、あらたな先史美術史像の構築を試みることを目的としている。 初年度は、縄文時代から弥生時代の移行期、弥生時代から古墳時代の移行期の土器を対象に、文様破調の具体事例を集積すべく、事前選定地域の資料を対象に、出張調査による3D写真計測を集中的に実施することを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動制限等により、調査は予定通り実施できず限定的となった。そのため、遺跡発掘調査報告書等の猟歩に切り替え、対象地域・時期以外にも視野を広げて進めることで2D事例を一定数積み上げ、新事例は各地の一般向け招聘講演にて紹介し、文様破調を考察する際の基盤となる理論モデルを論文化した。また、今後集積していく3Dデータの公開先の模索も進め、大規模データベースでの公開の内諾を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画当初は、初年度に縄文時代と弥生時代、弥生時代と古墳時代の各時代の移行に焦点を当て、日本列島の各地域に調査へ赴き、3Dデータの集積に集中する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動制限等により、急遽、計画変更を余儀なくされ、2Dデータの事例集積に切り替えたため、3D写真計測調査は近隣での限定的な調査にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、初年度に実施できなかった3D写真計測調査の機会をうかがいつつ、初年度に集積した2Dデータの新事例を基に学会発表や論文投稿、招聘講演等で、順次、可能な成果の公開に努めていく。
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Causes of Carryover |
計画当初は、初年度に縄文時代と弥生時代、弥生時代と古墳時代の各時代の移行に焦点を当て、日本列島の各地域に調査へ赴き、3Dデータの集積に集中する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動制限等により、急遽、計画変更を余儀なくされ、2Dデータの事例集積に切り替えたため、3D写真計測調査は近隣での限定的な調査にとどまった。これにより、初年度の旅費の使用が大幅に減ったため、次年度使用額が生じた。次年度以降、新型コロナウイルス感染拡大の状況を見ながら、当初計画の出張調査を実施していく予定である。
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Research Products
(6 results)