2023 Fiscal Year Annual Research Report
現代ピアノ音楽創作における打鍵、ペダリング、ハーモニクス奏法と音の減衰の諸相
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21K00212
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
前田 克治 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00449612)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 作曲 / 現代音楽 / ピアノ / 奏法 / ペダリング / 打鍵 / 音律 / 減衰音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ピアノの「減衰する」というほとんど唯一の弱点であり最大の美質に着目し、その減衰の諸相を、「作曲」「演奏」の双方向からのアプローチで探究するものである。令和5年度の主な実績は、次の2点である。 ①CD制作 令和5年8月22日~25日、高知県立美術館ホールにて収録。ブックレット執筆、マスタリング立ち合い等を経て、令和6年3月7日にコジマ録音よりリリースした。収録には、2度の試演会を兼ねたレクチャーコンサート(令和5年3月21日と8月14日)でも用いた高知大学のスタインウェイD274を持ち込んだ。最良の環境と響きを得ることで、3種(ダンパー、ソステヌート、シフト)のペダルや打鍵の効果、音律や調律の影響が明らかになった。特に、微細な響きの折り重なり・滲み等が生み出す様々な色合い、または減衰の形について、演奏家側からのアプローチによって実験することができた。 ②論文執筆 研究課題と同名の論文を執筆し、高知大学教育学部研究報告第84号(令和6年3月発行)に掲載。ピアノの誕生からモダンペダルへの歴史的変遷と音楽的変容を辿ると共に、その文脈の中で筆者の創作の位置づけ(意義、目的)を明らかにしていった。さらに、打鍵、ペダリング、音律といった作曲技法、あるいは、素材の限定、静寂と余白、非連続性・非対称性、非発展性といった創作コンセプトについて、現代的視座だけでなく、西洋古楽や日本の伝統的芸術観や感性との親和性にも触れながら詳細に分析していった。収録時の実践的記録も本論文の補完に役立った。 令和3年度からの文献・音源調査、演奏家としてのピアノ奏法の探究、調律師との協議、さらに令和4年の「Dawn Light(曙光)」作曲を経て、本研究は、最終年度にCD(音)と論文(文章)という形で結実した。
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Remarks |
〈演奏と解説〉現代ピアノ音楽創作における打鍵、ペダリング、ハーモニクス奏法と音の減衰の諸相 第2回 開催 日時:2023年8月14日 場所:高知大学教育学部音楽棟ホール
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