2021 Fiscal Year Research-status Report
What is RRI? Fields' Comparative Study on Responsibility of Scientists
Project/Area Number |
21K00244
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤垣 裕子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50222261)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 科学者の社会的責任 / RRI / ELSI / オープンサイエンス / 分野比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、日本の科学者の社会的責任論において物理学者の寄与が突出している理由として、唯一の被爆国である日本の物理学者のなかに「原子核エネルギーを解放してしまった」物理学者の責任感があること、1955年のラッセル・アインシュタイン宣言を受けて1957年からはじまったパグウォッシュ会議にその物理学者の責任感が受け継がれていること、同宣言にある「Remember your humanity」という言葉のなかに人類の知恵がふくまれていること、などを明確にしたうえで、欧州においてRRI概念が発達した背景を東京フォーラム前後の欧州研究者へのインタビューを通じて明らかにした。 欧州でRRI概念が発達した理由は、異なる歴史・文化・価値観をもった国(たとえば、何がよい生活なのかについてのイメージや原子力・GMOについての考え方が異なる)が共存(co-habitat)するには、どのようなイノベーションが必要なのかを常に省察する必要があるからであることが示唆された。また、RRIでは、技術に価値が入り込むことが考慮されるからこそ、多様な価値を反映させるために多様なステークホルダーの参加が必要となり、反射性、多様性と包摂性、呼応性などが強調されることも明らかとなった。 さらに、RRIではオープンサイエンスがキーワードの1つとなっているが、研究業績の蓄積が紙媒体の印刷文化からオープンサイエンスに移行するにしたがって、どのような変化を内包することになるのか、についての分析を行い、それを論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学者の社会的責任論の分野比較を行ううえで、日本の古典的責任論と現代のRRIの違いを明確にすることは必須である。今年度はそれを国際シンポジウムの形で実現し、大きな示唆を得ることができた。また、RRI概念が欧州独特の文化背景(異なる文化の共存)から発していることも明らかになったため、当初予定していた方法論(例:物理学者の社会的責任シンポジウムのサーキュラーの分析)だけではなく、別の方法論も考える必要があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の科学者の社会的責任論において物理学(とくに原子核物理学)者の寄与が突出しており、古典的責任論として物理学者の責任を思い起こすのは、世界一般の現象ではなく実は日本に特異的なことであることが明確になると同時に、欧州でRRI概念が発達した理由は、異なる歴史・文化・価値観をもった国(たとえば、何がよい生活なのかについてのイメージや原子力・GMOについての考え方が異なる)が共存(co-habitat)するには、どのようなイノベーションが必要なのかを常に省察する必要性があるためであることがわかった。この2点を総合すると、日本における古典的な物理学者の社会的責任のみが「科学者の社会的責任論」だと考えて欧州とAI・ロボットの共同研究をしようとしたときに障害にぶちあたることになる。つまり最先端AI・ロボット研究が現在かかえている課題から「社会的責任の分野比較」をすすめていくことが肝要であると考え、この方向で研究を推進しようと考えている。
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Causes of Carryover |
科学者の社会的責任論の分野比較を行ううえで、日本の古典的責任論と現代のRRIの違いを明確にすることは必須である。日本の科学者の社会的責任論において物理学(とくに原子核物理学)者の寄与が突出しており、古典的責任論として物理学者の責任を思い起こすのは、世界一般の現象ではなく実は日本に特異的なことであることが明確になった。同時に、欧州でRRI概念が発達した理由は、異なる歴史・文化・価値観をもった国が共存(co-habitat)するには、どのようなイノベーションが必要なのかを常に省察する必要性があるためであることがわかった。この2点を総合すると、当初予定していた方法論(例:物理学者の社会的責任シンポジウムのサーキュラーの分析)だけではなく、別の方法論も考える必要があることが示唆されたため。
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