2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Soviet Agrobiology School Based on the Archival Documents of the Lenin All-Union Academy of Agricultural Sciences (1935-1948)
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21K00246
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 宏文 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (30573050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ルィセンコ主義 / ソ連遺伝学 / 農業科学アカデミー / 農業生物学派 / グルシチェンコ / 自然改造計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年2月に始まって以降、2024年4月現在まで続いているロシアによるウクライナへの軍事侵攻のためにロシアへの渡航が事実上不可能となったことを受けて、前年度に引き続き2023年度の課題研究は正常に実施できなかった。ロシア国立経済文書館にて農業科学アカデミー関連の文書史料を直接閲覧できない限りにおいて、ソ連の農業生物学派内部での人物関係の把握とルィセンコの権力状態の実態解明を軸とした本研究課題は到底満足に進められない状況にある。課題に関係するこれまでの公刊物としては、「生物界と自然環境を〝作り変える〟科学思想の理念と現実――ダーウィン、ヴェルナツキイ、スターリン、ルィセンコ」(金山浩司編『ソヴィエト科学の裏庭――イデオロギーをめぐる葛藤と共存』、水声社、2023年、第八章所収)が挙げられ、この中で、ルィセンコが率いる農業生物学派が1948年に森林学分野へと介入し始め、ソ連の国土計画(自然改造計画)や環境政策に否定的な影響を及ぼしたことについて論じた。その一部内容については、2023年8月にドイツのフランクフルトで開催された国際会議The 16th International Conference on the History of Science in East Asia (16th ICHSEA) で報告した。しかしながら、ルィセンコが国土計画・環境政策への介入に至るまでに、農業生物学派内で行われた議論内容や意思決定の様子を解明するためには、農業科学アカデミーに関する文書をまとめて所蔵するロシア国立経済文書館の調査が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要に記したとおり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が理由である。これにより農業科学アカデミーに関する文書を一括して保管するロシア国立経済文書館(モスクワ)での史料調査が事実上不可能な状態が続いている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状ではロシアとウクライナの戦争状態、および国際関係の推移を見守ることの他に選択がない状況である。2024年度内に問題に対して何らかの解決が図られ、日本からロシアへの渡航要件が満たされたら、残された期間内において実施可能な文書館史料の閲覧・調査を行う。限られた機会での調査を効率的に行うためには、調査対象とする資料や人物、議論内容を具体的に絞る必要がある。例えば、ルィセンコと農業人民委員部(農業省に相当)の幹部、その他、ルィセンコの右腕であるイヴァン・グルシチェンコとの間でやりとりされた手紙内容を見ることにより、ルィセンコの農業生物学派内部での権力状態の推移を部分的にであれ確認することができると思われる。 もう一つの方策は、ロシア国外の図書館や文書館に所属された研究資料にあたることである。実際、ロシア現地での資料調査ができないという状況下において、研究対象は異なるが、フィンランドやチェコ、アメリカ等の図書館に所蔵されているロシア語資料を用いて研究課題を進めているロシア研究者の事例がある。これらの研究者から情報を集め、かつ図書館の資料内容を事前に精査した上で、ロシア国外の図書館においてルィセンコや農業生物学派の活動に関する資料調査を行う可能性も考えられる。
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Causes of Carryover |
課題初年度における新型コロナウイルスの世界的流行拡大、さらにその後のロシアとウクライナの間の戦争の影響により、まとまった期間をとってモスクワでの文書館史料調査が実施できなかったのが、次年度使用額が生じた理由である。状況が好転し、渡航滞在の安全性が十分に確保できた場合に、現地での史料調査を行う。与えられた時間内で実行可能な史料調査の方法(例えばロシア国外の図書館が所蔵する史料の調査等)も検討する。
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Research Products
(1 results)