2021 Fiscal Year Research-status Report
転換期における三都の好色本・浮世草子と初代・二代目西村市郎右衛門の「西村本」研究
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21K00267
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
藤原 英城 京都府立大学, 文学部, 教授 (20264749)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 好色つや男 / 上方版好色本 / 未翻刻好色本 / 西村本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「西村本」の「好色本(浮世草子)」について、当時の人々は「西村本」の何に惹き付けられたのか、「西村本」はそれ以前の好色本とは何が違ったのかを探るべく、貞享・元禄期の西村本以外の上方版好色本と西村本との比較研究を行うために、それらの好色本の所在状況をまずは整理した。さらにそうした中から、特に『好色つや男』の調査に着手した。 『好色つや男』は野間光辰著『初期浮世草子年表』(青裳堂書店、昭 59)に記載されるものの、『国書総目録』には出典が「浮世草子年表による。」とだけ記され、これまで所在の分からない未調査、未翻刻の作品であった。 しかし研究代表者は京都大学大学院文学研究科図書館に原本を見出し、その調査に着手し、研究成果を「上方版浮世草子『好色つや男』(巻二)-翻刻と解題-」(『京都府立大学学術報告 人文』73号、2021年12月)と題して公刊した。 調査結果により、『好色つや男』の刊行は元禄前期、遅くとも宝永前期を下限とすべき作品であることが推測されるが、挿絵は蒔絵師源三郎風であり、西鶴本を手掛けた源三郎の活動を知ることのできる作品でもある。 西鶴没後、上方・江戸の作者・書肆はポスト西鶴をめぐって試行錯誤を繰り返すことになるが、好色本の嚆矢となる『好色一代男』またそれに続く『好色二代男』に代わる『好色~男』の試みは、西村本においては『好色三代男』として具現化する。しかし、『好色つや男』は西村以外にも同時期にそうした試みを行う作者や書肆のあったことが確認できる貴重な作品である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、諸本・書誌調査が十分に実施できなかったが、研究成果を公刊することができ、おおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に基づき、上方版好色本の調査・収集を行う。特に2022年度においては、その中でも『好色文書筆』の調査を本格化する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、調査出張が困難となり、その見込み費用を複写資料を取り寄せることで補ったものの、若干分が繰り越しとなった。 次年度は繰越金分も合わせ、資料保存機関への調査出張に重点的に取り掛かる予定である。
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Research Products
(1 results)