2023 Fiscal Year Annual Research Report
転換期における三都の好色本・浮世草子と初代・二代目西村市郎右衛門の「西村本」研究
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21K00267
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
藤原 英城 京都府立大学, 文学部, 教授 (20264749)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 西村市郎右衛門 / 浮世草子 / 青木鷺水 / 北条団水 / 西沢一風 / 西村本 / 八文字屋本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究としては、昨年度に引き続き、「西村本」の「浮世草子」について、京都の書肆初代西村市郎右衛門未達を引き継いだ二代目市郎右衛門の誕生とその出版活動を中心に調査・研究を行った。 初代市郎右衛門は元禄9年に没するが、二代目市郎右衛門については、正徳から享保頃にかけて江戸に登場する同名の書肆西村市郎右衛門が二代目として京都に戻ったとする見解がある一方で、元禄8年3月に京都に登場する西村九左衛門が二代目を引き継いだとの見解があり、これまで定説はなかった。本研究において、西村九左衛門が初代の没後間もない元禄9.10年中、遅くとも11年正月には二代目を襲名したことが明らかとなるとともに、その二代目が正徳頃に江戸に登場する西村市郎右衛門と同一人物であることを確定した。 さらにそのことから二代目市郎右衛門がその頃に江戸への進出を企てたことが窺えるが、そうした方針の裏側には、京都において自身が手掛けた新「西村本」とも言える浮世草子の出版、浮世草子界への参入が失敗に終わったという事情があったことも明らかとなった。 二代目は宝永2年5月に『御前独狂言』を出版し、浮世草子出版に本格的に参入するが、それは初代が手掛けた好色本を中心とする浮世草子「西村本」とは違い、初代との差別化を意識した新「西村本」とも言えるものであった。しかし、それは当時浮世草子界の覇権を八文字屋と競っていた西沢一風・北条団水を中心とする反八文字屋陣営に追随するものであり、宝永末年に反八文字屋陣営が敗北するとともに、二代目市郎右衛門の浮世草子出版も頓挫することになった。 二代目市郎右衛門の江戸進出は、こうしたネガティブな要因を背景としながらも、結果的に新たな市場としての江戸に着目させる契機ともなり、江戸店西村源六店の開店、さらに江戸本屋仲間の結成に深く関与することになる。
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Research Products
(1 results)