2021 Fiscal Year Research-status Report
『日本書紀』古訓との比較による『源氏物語』複合動詞の造語法と表現性の実証的研究
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21K00268
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
本廣 陽子 上智大学, 文学部, 准教授 (40608931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬間 正之 上智大学, 文学部, 教授 (00187866)
葛西 太一 國學院大學, 文学部, 研究員 (20869200)
宮川 優 上智大学, グローバル教育センター, 助教 (20880941)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中古文学 / 上代文学 / 源氏物語 / 日本書紀 / 複合動詞 / 訓読語 / 文章表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『源氏物語』において特有の複合動詞が生み出された背景に上代文献とその訓読の存在があるのではないかと考え、両者の関係を明らかにするとともに、『源氏物語』における複合動詞の表現性を考えようとするものである。 初年度となる令和3年度の課題は、(1)『源氏物語』の複合動詞の用例採取を行い、使用実態を明らかにすること、(2)『日本書紀』をはじめとする上代文献の動詞性複音節語(主に動詞性の二字漢語)について、用例採取及び考察を行うこと、(3)研究代表者、研究分担者、研究協力者による研究会を実施し、問題意識の共有をはかることの3点であった。 (1)については、研究代表者を中心に研究協力者や上智大学大学院文学研究科の学生の協力のもと、『源氏物語』における複合動詞のほぼ全用例を採取し、加えて、『源氏物語』以前に例が見られないと思われる語の抽出を行った。(2)については、研究分担者を中心に、『日本書紀』及び『古事記』、『風土記』において用例採取を行い、動詞性複音節語の分類、六朝口語との関係などについて考察を行った。加えて、『遊仙窟』における二字漢語の和訓についての調査も行った。(3)については、研究代表者・分担者・協力者と上智大学大学院の学生をメンバーに加えた研究会を、約2か月に一度、計5回行った。コロナ禍のためオンライン開催ではあったが、研究代表者・分担者・協力者がそれぞれの研究の進捗状況を発表するとともに、議論を通して相互の理解を深めた。 また、関連する研究として、①『源氏物語』における非生物を動作主体とする複合動詞「―あふ」の表現性を考察した論考、②『日本書紀』の欽明紀の文字表現に着目し編述の過程を考察した論考、③『風土記』の山川原野の記述方法から描写意識を考察した論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は研究の初年度であるため基礎的な調査や考察を行うこと目的とし、それについてはほぼ完了した。特に『源氏物語』の複合動詞の調査については、8月~9月と2月に重点的に行い、若干の例を残してはいるものの、ほぼ全ての用例を採取することができ、『源氏物語』の複合動詞の全体を見渡すことができるようになった。上代文献においては用例採取と考察が同時に進められており、そのため令和3年度に全用例の取得は目指さなかったが、本研究を進める上で基盤となる考察を得られた。また、上代・中古のいずれの分野においても、この研究と関連する新たな知見を発表することができた。したがって、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
『源氏物語』の複合動詞の調査については、これまでの調査データを整理して参照や検索が可能な状態に整え、具体的にどのような複合動詞がどこで用いられているのか、分析を行う。上代文献についても、令和3年度に引き続き、用例採取と考察を行い、動詞性複音節語の分析を行う。今後も研究会を実施し、上代文献と『源氏物語』の複合動詞の比較検討を行い、議論を通して考察を深める。また、コロナ禍のため行うことのできなかった諸本調査を、令和4年度以降、状況に応じて行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた資料調査が行えず、また、学会もオンライン開催となったため、旅費の支出がなかったことによる。令和3年度に行えなかった資料調査は令和4年度以降に行う。
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Research Products
(3 results)