2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on the formation of Edogawa Rampo's collection and its utilization
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21K00273
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
高山 みさと (丹羽みさと) 立教大学, 江戸川乱歩記念大衆文化研究センター, 助教 (90581439)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 江戸川乱歩 / 古典籍の収集と利用 / 和本カード / ジェンダー観 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、立教大学所蔵の江戸川乱歩関連資料の調査やデータ整理を中心に行った。 近世資料の収集を思い立った乱歩の、興味の源泉を探るべく、旧蔵中の雑誌や論文の切り抜き等を調査し、古典籍の収集記録である「和本カード」のデータ化を行った。乱歩の旧蔵書は、低い頻度であるものの、古典籍市場に売りに出されることもある。データ整備により、立教大学図書館に所蔵されていない古典籍が、全体の約1割あることがわかった。古典籍のデータ化を引き続き行うとともに、手放した資料の性質やその時期などについても追跡調査を行い、より詳細な乱歩の収集の全体像をつかんでいきたい。それにより、乱歩の古典に関する造詣の深さや、古典籍に描かれた男性同士の相互関係について、またそれを乱歩がどのように理解し、捉えていたのかを把握することが可能となろう。 さらには、乱歩の旧蔵資料を中心とした人文情報のデジタル化による新たな研究手法の開発についても全面的な協力を行った。特に乱歩作品における古典籍利用の痕跡を探るための手法の一つとして、作中に現れた嗜好品を分析し、該当品目の出現度や小道具としての意味や役割などについて、発表を行った。 また実地調査として乱歩の故郷名張や、文献収集の友を得た鳥羽、幼年期を過ごし、多くの書籍に触れた名古屋を訪れ、乱歩が撮影した映像と現在の様子を比較するとともに、乱歩研究者との交流を図った。乱歩が過ごした生活空間には、川や海などが近くにあり、彼の水への関心は作品や残されたフィルムなどからも推察される。古典籍への影響については、引き続き考察していく必要があるが、今年度は特に乱歩の人となりについて、新たな資料の発掘により、従来知り得なかった角度から貴重な情報を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立教大学に所蔵されている江戸川乱歩旧蔵資料、とくに古典籍関係の雑誌や書籍などの切り抜きや古典籍購入記録である「和本カード」などの調査、データ整理を行った。また乱歩に関する人文情報資源のデジタルアーカイブ化を進めた事により、これまで知られてこなかった乱歩の人となりを知ることが出来、作品分析に対する複層的なアプローチが可能となった。 乱歩周辺人物の蔵書形成への具体的な影響力を分析していくため、当初は岩田準一等による乱歩宛書簡の調査を予定していたが、所蔵先である鳥羽の江戸川乱歩館の全焼により、資料の閲覧が困難となった。そのため、本年度は生誕地や旧宅など、中部地方を中心とした実地調査を行い、生活空間が作家に与えた影響を考察することに代えた。
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Strategy for Future Research Activity |
古典籍収集における乱歩の人的ネットワークの役割について、書簡などから考察していく予定であったが、キーパーソンの一人である岩田準一資料に関しては所蔵先の焼失により、それが困難となった。これについては、岩田準一研究者や乱歩研究者などに話を伺い、知見を得ることで補っていきたい。 また前年度から引き続き「和本カード」などのデータ化を行いつつ、古典籍自体の内容と乱歩の関心を合わせて考察し、蔵書形成の根幹に迫りたい。
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Causes of Carryover |
既存のパソコンでデータ処理が間に合ったため、ノートパソコンの購入を次年度に見送った。それによりパソコン分の繰越金が生じた。次年度にパソコンのほか資料の購入と調査のための旅費を支出する予定である。
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Research Products
(4 results)