2022 Fiscal Year Research-status Report
平安時代文学、特に和文と歌謡にみられる韻律的表現の研究
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21K00275
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
陣野 英則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40339627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 悠希 東洋大学, 文学部, 准教授 (40732756)
山崎 薫 盛岡大学, 文学部, 助教 (90822958)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 平安時代 / 和文 / 韻律的表現 / 枕草子 / 宮廷歌謡 / うつほ物語 / 源氏物語 / 同語反復と同音反復 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も前年度と同様に、研究代表者、研究分担者(2名)、および早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程の院生(1名)の計4名による小さな研究会を5回開催した(いずれもZoomミーティング利用による)。 まず、前年度の第5回の発表者であった陣野英則が、第6回(5/29)においてひきつづき「『源氏物語』の散文部分に関する韻律的表現」について発表した。つづいて第7回(8/6)では山﨑薫が「夕霧と雲居雁の結婚と催馬楽引用」について、第8回(10/23)では山中悠希が「『枕草子』の本文と韻律」について、第9回(12/16)では藤澤咲良が「『うつほ物語』と神楽」について、そして第10回(3/16)では再び山中が「反町茂雄氏旧蔵(東洋大学蔵)「清少納言枕草子」の本文とその位置付け」と題して、それぞれ発表した。なお、第5回と第6回の発表内容の一部を活かした論文が年度内にまとめられ、公刊されている。 以上の研究会活動により、各人が主たる対象としているジャンルあるいは作品にみられる韻律的表現の特徴、また本文の特性などを参加者の間で共有することとなった さらに、本研究課題と間接的に関わる研究も、それぞれが展開している。たとえば、『枕草子』本文に関する受容と変容の問題を扱う論文(山中)、『源氏物語』の夕霧と雲居雁の結婚に関わる催馬楽引用(山﨑)、韻律的表現について一部でとりあげている『堤中納言物語』の研究書(陣野)などが公刊されている。 また、明治から昭和前期における『源氏物語』の注釈書・現代語訳・梗概書の実態とそれぞれの展開に関する論文も学会誌に掲載された(陣野)。これは、韻律的表現の研究そのものではないが、昭和前期までの『源氏物語』研究では、戦後の研究よりもむしろ散文部分の韻律、律調に留意していることもあることから、基礎的研究としての意義を有するものといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2年目は、1年目につづいて当初の想定通り、オンライン開催ではあるが5回の研究会を実施することにより、参加者それぞれが有している知見を共有するとともに、歌謡、『枕草子』、『うつほ物語』、『源氏物語』などに関する近年の研究の進展について把握する機会を得た。また、研究会での各発表の一部は既に論文化されている。 一方で年度末までには論文化されていない発表があるものの、それらのうち次年度中には公刊に至ると予想されるものもあり、さらには次年度に開催される国際研究集会(2023年8月のEAJS)での発表へと発展させる予定もあることなどから、全体としては「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの3年目も、これまでと同様に、4人による研究会を基本的には二ヶ月に一度のペースでひらく予定である。そうした機会をもちつづけることで参加者それぞれの研究の深化を図りつつ、和文における音韻、韻律の問題、また音韻、韻律と関わる諸問題などについての探究へと繋いでゆきたい。 さらに、それぞれの研究会での発表を論文化してゆくとともに、2023年8月にベルギーのヘントで開催されるEAJSでは、研究分担者(山中悠希)による研究発表(個人)のエントリーが採択されている。当初、想定していた同学会でのパネル発表は諸般の事情で断念することになったが、本研究プロジェクトのメンバーが、多数の研究者が参加することで知られているEAJSで和文の韻律的表現に関する研究発表を行うことにより、欧州ほか、多数の国と地域の研究者たちに韻律的表現の研究の重要性を伝えることができるだろう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響がなおもつづいて2022年度は、当初予定したような出張、調査などを実現することができなかった。また、必要な研究書などについてもより吟味した上で購入する方がよいと判断した場合もあった。2023年度は、年度の前半から吟味した結果をふまえて、これまでに参照しきれていないジャンルもふくめて、研究書などを購入するとともに、学会参加などのための旅費などに充ててゆくことになる。
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Research Products
(7 results)