2021 Fiscal Year Research-status Report
震災後短歌による出来事の現前化と再構築に関する総合的研究
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21K00286
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
遠藤 郁子 石巻専修大学, 人間学部, 教授 (00735756)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 短歌 / 東日本大震災 / 日本近現代文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は主として、①2011年から2015年までの新聞歌壇の動向を調査、整理、②2011年以降の短歌雑誌における震災詠の取り扱いについての調査、整理を行った。 ①については、『朝日新聞』『読売新聞』『福島民報』『河北新報』を対象に、2011年から5年間の新聞歌壇を調査し、震災詠掲載傾向の流れの概略を掴むことができた。4誌ともに、新聞歌壇は震災直後、一時休載となったのち、5月に再開している。再開直後には、震災詠が積極的に掲載されていることが確認できた。また、2022年度に取り組むデータ解析の下準備として、これらの調査と同時に、新聞歌壇の掲載短歌を同フォーマットのExcelデータに加工する作業を行った。 ②については、『短歌研究』と『現代短歌』を対象に、震災詠の出詠や震災詠関連の記事や論評をピックアップし、内容の確認を行った。『短歌研究』は毎年12月号の「歌壇展望」で震災後3年間は震災詠を特集していた。他紙でも3年目以降は2021年の10年の節目まではほとんど特集されておらず、この3年間が震災詠のひとつのピークであったことが分かる。一方、『現代短歌』は震災後の2013年に創刊されており、創刊後しばらくは積極的に震災詠を取り上げることはなかった。震災直後の震災詠の噴出が過ぎ去った後に出発したことが、そうした震災詠との距離の取り方に現れていると考えられる。しかし、震災後5年目の2016年4月号の特集「東北を詠む」以降、積極的に震災詠について取り上げており、記憶の劣化と向きあう独自の姿勢を読み取ることが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新聞歌壇の掲載短歌を同フォーマットのExcelデータに加工する作業をアルバイトの協力を得て行う予定であったが、新型コロナ感染の拡大の影響で効率的に作業分担をして進めることができなかった。一部のデータ作成に遅れが出ているが、それ以外はおおむね予定通りに研究は進んでいる。遅れているデータについても、残りのデータも含め、2022年度中には完成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には研究計画どおりに進め、2022年度も新聞歌壇の掲載歌の収集、整理の作業を中心に継続する。 ただし、2023年度以降に予定していた被災圏の歌人の個別活動の検証については、2020年に歌集『矩形の洞』を上梓された鈴木洋子氏を対象に追加し、2022年度中にお話を伺う機会を作ることとしたい。
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Causes of Carryover |
・新型コロナ感染の拡大の影響で、データ作成の作業協力を予定通りにお願いすることができなかったため、「人件費・謝金」の支出が計画よりも少額となった。2022年度には作業を効率化し、データ作成をスムーズに進めるため、新聞データベースの使用申請を予定しており、残額をそのために利用する計画である。 ・同じく新型コロナ感染の拡大の影響で、効率的な出張は不可能と判断したため、「旅費」を使用しなかったが、2022年度以降の出張旅費として使用する予定である。
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