2021 Fiscal Year Research-status Report
「負け方」の問題――戦後日本における敗北の語りの歴史的分析
Project/Area Number |
21K00293
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
五味渕 典嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10433707)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 日中戦争 / アジア太平洋戦争 / 戦争文学・戦記文学 / 戦争記憶 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は「研究の離陸期」と位置づけ、以下の活動を行った。 (1)研究資料の集積と分析。新型コロナウイルス禍の影響で、歴史資料館や文学館等に所蔵されている一次資料の調査は十分に進められなかったが、1944年~1945年の日本敗戦直前期の新聞・雑誌言説資料を集中的に収集・整理した他、敗戦後に公刊された日記・回想記の分析を継続的に行うことで、2022年度以降の研究の土台作りを行った。 (2)「敗北」の受容にかんする多角的検討。1945年の日本敗戦の社会的受容を複数の視座から検証するために、近代以降の「敗戦国」の政治史・社会史・思想史にかかわる文献を集積し、精査した。また、日中戦争・アジア太平洋戦争後の東アジアにおける脱植民地化と国際秩序の再編を視野から取り落とさないために、いわゆる「引き揚げ」にかかるテクストも含め、1945年~1950年の朝鮮・台湾・中国を舞台として取り上げた文学テクストを積極的に収集し、日本列島の経験との差異を考究した。 (3)研究成果の報告。(1)で行った調査をもとに、アジア太平洋戦争末期の日本社会が来たるべき「敗北」をどのように想像・表象したかをめぐって、研究分担者として参加している科研費プロジェクトの合同研究集会にて研究報告を行った。また、日中戦争期の従軍記の表象の分析から、日中戦争・アジア太平洋戦争期の他者表象が現在の日本社会におけるレイシズムの言説と連続的であることについて、問題提起を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題採択時から新型コロナウイルス対応を意識した計画を立てていたので、政府による「緊急事態宣言」下でもスムースに研究活動をスタートさせることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究の「展開期」と位置づけ、とくに1960年代~1970年代の「敗北の語り」の枠組みに注目する。この時期に刊行され、多くの読者を獲得した戦争文学・戦記文学作品やノンフィクション、戦争映画などの分析と検討を進める他、一般の将兵たちによって書かれた戦争体験記の収集と整理を進め、高度成長期の日本社会において「敗戦体験」がいかに位置づけられていったかを検証する。 加えて、本研究課題にかかる国内外の研究者との連携と対話を積極的に行うことを通じて、研究の深化と成果の発信に努めたい。その際、オンラインを積極的に活用するが、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、当初の計画で想定していた国外での研究調査も検討したい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる行動制限に対応するため、当初の計画で予定していた「日本国内の地域における戦争記憶資料の関連調査」の一部を2022年度に実施することとしたため。
|
Research Products
(1 results)