2021 Fiscal Year Research-status Report
蕉風復興運動の総合的研究-天明期・化政期における尾張俳壇の資料集成をもとに
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21K00295
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
寺島 徹 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (30410880)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蕉風復興運動 / 中興期俳諧 / 暁台 / 蕪村 / 秋田千句 |
Outline of Annual Research Achievements |
蕉風復興運動について、暁台を中心に資料調査ならびに学術論文の発表を行った。とくに、仙台市において、芭蕉百回忌追善事業資料である「風羅念仏 みちのく」資料の収集と書誌調査をおこなった。加藤暁台の場合、『おくのほそ道』の受容として、明和7年(1770)の『二編しをり萩』の旅がよく知られる。いま一つ、天明元(1781)から翌年にかけての奥州行脚を含む、『風羅念仏』勧進の旅は、奉財を募ることが主目的とされ、奥州行脚としての評価はほとんど見過ごされてきた。本調査では、これまで知られていなかった『風羅念仏』の奥羽系版本をあらたに見いだし、分析した。過去の研究史でも「風羅念仏」の勧進事業が、暁台の奥州行脚の集大成的なものであることが一部予想されていたものの、具体的な文献に乏しく、証明されてこなかったが、本調査では、あらたに『みちのく』巻3を紹介することにより、暁台の奥州行脚への思い、そして、「旅」「行脚」を通した「風羅念仏」事業の意図を明らかにできた。 また、東北俳諧に関係する調査として、初期俳諧の資料である『秋田千句』の書誌調査と研究を進めた。桂葉とその子、里鶯の調査を行い、『八束穂集』と『秋田千句』が延宝期の秋田俳壇の発句集と連句集の両輪であることを分析し、その成果を、研究会で公表した。 他にも、江戸中期の資料調査の一環として、夜半亭の初期資料である巴人の『元文四年歳旦 夜半亭』を発表した。以前から、蕪村の発句を中心に、その内容は知られているものであるが、享保期の江戸俳壇、上方俳壇を繋ぐ資料として、貴重であると考えるため、翻刻した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蕉風復興運動について、暁台を中心に資料調査、学術論文の発表を行った。また、東北の連句関係の資料の発表も行い、新たな知見を得ることができた。ただし、新型感染症拡大の影響もあり、東北への出張は、わずか1回にとどまった。本年度は、研究の2年次となる。世情も回復することが予想されるため、仙台市、秋田市、横手市、一関市などを中心に、3~5回にわたり、東北地方の書誌調査を予定している。他に、国文学研究資料館、早稲田中央図書館などにも、書誌調査に赴く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年次における本年度も、蕉風復興運動における、尾張、東北を中心とした書誌調査を継続して行う。とくに、暁台を中心とした連句関係の資料、秋田の桂葉、のちの五明を中心とした秋田俳諧の資料をもとに調査を行う。 東北地方を中心として、仙台市、秋田市、横手市、一関市で書誌調査、資料収集を行う。その調査の中で見つけ出された資料の翻刻、校訂作業の過程で、フィードバックされた蕉風復興運動に関する俳壇の知見を随時発表する。とくに、連句資料においては、蕉風以前の俳諧となるが、桂葉、里鶯の『秋田千句』の分析を進め、延宝期における地方俳書の嚆矢としての位置づけを明らかにする。『八束穂集』(延宝8年刊)、『誹諧小相撲』(寛文7年刊)などの桂葉編による俳書との関係を精査するとともに、『阿蘭陀丸二番船』(延宝8年刊)など、談林系の俳書との関係も分析する。その成果を学術雑誌に発表することを計画している。また、孤本で貴重な資料であるため、すでに所蔵者の了解を得、年度内における全文翻刻も予定している。 暁台の連句資料においても、蕪村、暁台の連句法要と俳諧の交流実態の分析を行う。とくに、暁台の連句評点「七十二候」(仮題)の分析を中心に、式目、付け方の親疎の観点から分析する予定である。このように、地方俳壇について、蕉風以前の動向も踏まえながら、のちの蕉風復興運動につながる俳諧資料の調査、分析を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大によって、2021年度前半に、予定していた遠方への出張がまったくできなかったため初年度未使用の分が発生した。2022年度は、世情の回復により、出張調査を予定の規模で実行することが可能と考えている。
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Research Products
(3 results)