2021 Fiscal Year Research-status Report
文学テクストとしての近代日本語歌詞に関する総合的研究
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21K00298
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
小林 洋介 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (00757297)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歌詞 / 中原中也 / 朝の歌 / 諸井三郎 / 世界音楽全集 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代日本語〈歌詞テクスト〉の中でも特に中原中也「朝の歌」「臨終」について、資料調査を行い、研究成果の一部の公表を実施した。具体的には下記のような研究活動を遂行した。 ・2021年6月25日、および、同年11月6日に国立国会図書館に出張し、「朝の歌」「臨終」に関する先行研究や同時代資料を収集した。「朝の歌」「臨終」が、門馬直衞編纂『世界音楽全集 第二十七巻 日本歌曲集』(春秋社、1932年5月)に収録されていることはこれまでも知られていたが、今回の調査の結果、それに加え、門馬直衞編纂『世界音楽全集第十巻 日本歌曲集』(ソフトカバー版)(春秋社、1934年1月)にも収録されている可能性が見えてきた。 ・そこで、科研費を用いて1934年版『世界音楽全集 第十巻 日本歌曲集』を古書店から購入し、さらに詳細な調査を加え、1932年版第二十七巻と全く同じ楽譜が掲載されていることを確認した。 ・中原中也の会第24回研究集会(2021年5月16日、オンライン)において口頭発表を行った。その概要は以下のとおりである。 明治以来の軍歌や流行歌の多くが七五調であるのとは対照的に、当初は歌詞として発表された中原中也「朝の歌」は五七調であるため、そこに楽曲を附そうとすると必然的に同時代に主流だったものとは異なるリズムの楽曲が附されることとなる。そのようにして「朝の歌」は、「軍楽」を歌詞のモチーフの1つとしていながらも、「軍楽」とは全く異なるリズムを持つ歌曲として生成されることとなった。また、上述の『世界音楽全集第十巻 日本歌曲集』(ソフトカバー版)(春秋社、1934年1月)への「朝の歌「臨終」掲載の事実も、この研究集会で報告した。 このようにして、歌詞と詩の双方の特性を備え、文学史上特に重要な位置を占める中原中也「朝の歌」「臨終」の生成と流通について、新たな知見と情報を呈示することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行に伴い、所属研究機関における研究以外の業務量が増しているほか、調査出張に支障を来している。
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Strategy for Future Research Activity |
・2021年度に中原中也の会第24回研究集会で報告した内容を基にさらなる調査考察を加え、その成果を2022年度中に同会機関誌『中原中也研究』に発表する(掲載決定済)。 ・上記の他、戦時下の歌曲の歌詞について引き続き調査研究を遂行し、2022年度中の論文執筆を目指す(ただし刊行は2023年度にずれ込む可能性がある)。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、当初予定していた調査や出張を伴う学会参加を延期せざるを得なかったため、旅費の支出がなかった。また、同様の理由により他の研究者と合同で開催する予定だった研究会も延期したため、謝金の支出もなかった。調査や研究会は令和4年度以降に実施することとなるが、状況に応じて回数を減らすなどの措置を講じる。
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