2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K00301
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押野 武志 北海道大学, 文学研究院, 教授 (70270030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横濱 雄二 甲南女子大学, 文学部, 教授 (40582705)
諸岡 卓真 北星学園大学, 経済学部, 教授 (40528246)
高橋 啓太 花園大学, 文学部, 准教授 (50598638)
井上 貴翔 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (70770551)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 探偵小説 / 災害 / 震災 / 戦災 / 危機表象 / ミステリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本共同研究は、日本において1920年代に成立した「死」や「恐怖」を素材とするミステリが、20世紀以降の危機的事象(疫病、関東大震災、戦災、阪神淡路大震災、東日本大震災、原発事故…)をどのように受け止め応答しようとしたのかを究明する研究である。謎解きという高度に読者参加を要求するこのジャンルは、知的ゲームという娯楽性と、読者が作品にコミットする当事者性も備わっている。こうしたミステリの表現形式の特殊性と歴史的事象との関係性を通史的に分析することで、日本近現代ミステリ固有の危機表象の特質を明らかにする。 こうした本共同研究の目的を踏まえ、2021年10月30日にZOOMによる第1回の科研会合を開催した。当該年度の研究計画の実施状況や各自の研究成果を報告し合い、さらに、来年度に向けて共同研究全体についての方向性や出版の企画等について討議した。 2022年3月15日に花園大学において、第2回の科研会合及び研究報告会を開催した。研究代表者の押野武志は、「危機表象とミステリ」と題して基調報告を行い、その後、各研究分担者が研究報告を行った。横濱雄二は、「ミステリにおけるメロドラマ性についての検討」と題し、諸岡卓真は、「感染症とクローズドサークル――今村昌弘〈剣崎比留子〉シリーズを例に」ど題し、高橋啓太は、「社会派推理小説の説話的構造と戦後性――松本清張『砂の器』」と題し、井上貴翔は、「戦時下都市と探偵小説」と題し、それぞれ研究報告を行った。その後、来年度に向けての共同研究全体についての方向性の検討や研究成果の出版企画について話し合った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計画に基づき、各共同研究者は、それぞれ研究を展開した。2回の科研会合を開催して、情報の共有と研究の方向性を確認し合うことで、各論を「日本近現代ミステリにおける危機表象」という観点から、統合的な研究に結びつけることができた。その研究成果は、研究報告会において確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果を踏まえつつ、さらに発展させるべく、現代日本のミステリ固有の危機表象史を究明するために、同時代の言説や周辺ジャンルとの共時性や差異にも着目して分析を行う。特に、以下のような観点に着目して統合的なミステリ研究を目指す。
①ミステリ概念の歴史化と分析方法の精緻化 ②体系的なミステリ史の構築/近現代ミステリの危機表象の展開
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Causes of Carryover |
年度末に発注予定であった図書の納品時期が、コロナ禍の影響で遅れると判断したため、次年度に発注することとした。
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Research Products
(10 results)