2022 Fiscal Year Research-status Report
近世中後期における出版メディアの文化史的研究――菊屋七郎兵衛を中心とする
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21K00303
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
速水 香織 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60556653)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 近世文学 / 出版文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、菊屋七郎兵衛・菊屋喜兵衛と中心とする出版書肆の活動調査を行った。主な出向先は、国文学研究資料館、国立国会図書館、国立公文書館、京都府立京都学・歴彩館、神宮文庫で、Web上において閲覧不可能な資料を主な調査対象とした。 同時に、元禄―寛政期にかけて菊屋と交流のあった伊勢書肆・藤原長兵衛についても調査を開始した。同書肆は、伊勢国山田において、三都以外の地方としては非常に早く出版活動が確認され、活動初期から三都書肆と盛んな取引を行っていることから、菊屋の取引先として重要な存在になると認められる。この関係性を明らかにすることを目標とした。 このうち、18世紀初頭における藤原と菊屋との関係についての研究成果を「伊勢書肆藤原長兵衛と三都出版界との交流」(『地方誌研究』72-4号)と題した論文として発表した。菊屋と藤原との連名出版事例は多岐にわたるが、今年度は、特に伊勢参宮関係の実用書を調査対象とし、内容の相関もしくは変容、及び板元の変遷について明らかにした。この成果は「On the Publication of Travel Information Magazines in Japan in the 17th and 18th Centuries」と題し研究発表の形で公開した(於ケルン大学)。また11月には江戸時代の出版文化をテーマとした講演を行ったが(於塙保己一記念館)、本講演では、塙保己一が青年期に江戸から伊勢参宮を果たした事例を取り上げ、今年度調査対象とした実用書が当時の旅行者に有益な情報源となっていた可能性に言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象とした出版書肆の活動について、目標とした部分に関してはある程度明らかにすることができたものの、当初予定していた18世紀における活動調査の着手が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度において口頭発表した研究成果を論文化して公開する。また、調査範囲を18世紀以降に拡大するとともに、伊勢参宮関係書籍以外のジャンルに調査対象を広げる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染警戒レベルの緩和により、調査のための海外渡航を計画していたが、先方の招待による研究発表の依頼を受け(於ケルン大学)、調査を延期して発表に集中したため。令和5年度は、延期した在外古典籍の調査の実施を計画している。
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